琉球新報9~10月(2016)

2016年11月05日 17:20

陸自ヘリ高江投入 「まるで戦前」   2016年9月14日

自衛隊のCH47輸送ヘリが米軍北部訓練場の上空に姿を現したのは、13日の早朝午前6時だった。「とうとう来た」「こんなに早い時間とは」。驚く市民らが見詰める中、2機の自衛隊ヘリはG、Hの両地区付近にある作業ヤードやメインゲートへの離着陸を繰り返しながら午前9時すぎ、重機の空輸を始めた・・中略・・「ついに政府は禁を破った」と憤ったのは、沖縄平和運動センターの山城博治議長。「これまでとはレベルが違う。自国の正規軍隊が、県民の人権を蹂躙(じゅうりん)する構造。まるで戦前だ」 高江ヘリパッド建設反対現地行動連絡会の間島孝彦共同代表は「何でもありだ。県道を飛ぶのも非常識だ」と憤った。後略

陸自ヘリ空輸は「違法」 専門家、法解釈不可と指摘  2016年9月15日

・・前略・・専門家からは「違法」などと指摘する声が上がっている。・・中略・・稲田朋美防衛相も13日の記者会見で自衛隊法6章に明記されている任務について問われ「自衛隊法の何ページなの」と答えに窮し、「6章に列挙されているものには当たらないと思う」と述べるにとどめた。

辺野古断念を要請 翁長知事、自民・二階幹事長と会談  2016年9月15日

【号外】県が敗訴 承認取り消し「違法」 初の司法判断  2016年9月16日

「辺野古ありき」か 違法確認訴訟の沖縄県敗訴 揺らぐ司法の信頼性  2016年9月17日

 沖縄県と政府との間の辺野古新基地建設を巡る初めての司法判断で、福岡高裁那覇支部の多見谷寿郎裁判長は16日、積極的に「辺野古が唯一」と唱える判決を下した。過重な基地負担軽減と辺野古基地建設反対という大きな二つの民意の両立を否定する判決で、県民らの批判は避けられない。・・後略

<金口木舌>国家権力によるDV  2016年9月18日

 「最初はそれとは思わなかった。愛されているのだと思った」。配偶者や恋人からの暴力「DV(ドメスティックバイオレンス)」は、被害者自身、最初は気付かないことが多い。以前取材した女性もそうだった

▼相手のメールなどをチェックし交友関係を管理する、自分の価値観を押し付け相手に従わせる、自分の優位性を強調し相手を無能呼ばわりする...。そこに対等な関係はない
▼DVの本質は「力と支配」。相手を支配し続けるために力を使って繰り返し行う「虐待行為」であり「最悪の形の依存」と定義する人もいる
▼作家の高橋源一郎さんは著書で「わたしにはこの国の政治が(省略)いわゆるDVの加害者に酷似しつつあるように思える。彼らはパートナーを『力』で支配し、経済的な自立を邪魔し、それにもかかわらず自ら『愛する』よう命令するのである」と記す。特定秘密保護法に関してのエッセーだ
▼16日の違法確認訴訟の判決や、米軍北部訓練場のヘリパッド建設問題を考えると、いずれも国家によるDVだと改めて思う。話し合う気があるかのような優しさを見せつつ、権力で基地を押し付け、安全保障の面で沖縄への依存を強める
▼DVも基地問題も「人権が守られていない」という点で共通する。パートナー同士、国と地方も互いに「対等」な関係を築くことから始める必要がある。

基地強行の日本政府に「表現の自由尊重を」 国連人権理事会でNGOが声明  2016年9月21日

森を切り裂く二つの円 ヘリ着陸帯予定地で大規模伐採 北部訓練場  2016年9月21日

高江住民らが国提訴 着陸帯工事差し止め求め   2016年9月22日

 東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、東村高江の住民ら33人が21日、国を相手に工事の差し止めを求めて那覇地裁に提訴した。併せて判決が出るまでの間の工事差し止めを求める仮処分も申し立てた。・・中略・・ 訴状で住民側は、2カ所のヘリパッドが先行提供されている現状でも、オスプレイの訓練による騒音で睡眠妨害や生活妨害などが生じていると強調。・・後略
新基地阻止「闘い抜く」  県敗訴判決 1500人が抗議 那覇  2016年9月22日

米ハリアー戦闘攻撃機が墜落 沖縄本島東沖 乗組員は無事 2016年9月22日

翁長知事「取り消しは正当」 辺野古訴訟、沖縄県が上告  2016年9月24日

・・前略・・承認取り消しを違法だとした福岡高裁那覇支部判決を不服として上告した。最高裁が上告理由を認めて審理に入れば、年度内には確定判決が出る見通し。

工事の強行を批判 北部訓練場のヘリパッド建設で沖縄県知事 初訪問の防衛相と会談 2016年9月25日

首相「北部着陸帯、年内に完了」 所信表明で負担減強調  2016年9月27日

金城那覇市議会議長が辞任表明 10月5日付「議会空転の責任」  2016年9月26日

 ・・前略・・金城議長は、自民・公明両会派や、オール沖縄を支える立場の新風会を離脱した議員や民進党の議員などでつくる「なはの翼」無所属G、無所属の会の議員らから「議事運営が公平性に欠ける」などとして、辞職を求める決議が提出され、4度可決されていた。一方、「辞任する理由に値しない」などとして、金城議長が決議に応じてこなかったため、反議長派の議員らが9月定例会の代表質問などに出席せず、議会の混乱が続いていた。

<社説>安倍首相所信表明 基地負担軽減はまやかしだ  2016年9月27日

・・前略・・ 安倍晋三首相は所信表明演説で、北部訓練場の一部4千ヘクタールの返還について「沖縄県内の米軍施設の約2割、本土復帰後、最大の返還である。0・96ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することで、その実現が可能となる」と述べた。 これが沖縄の「基地負担軽減」になるというのだ。短絡的過ぎる。 東村高江では集落を囲むヘリパッド六つのうち、既に二つが完成した。このため、米軍の訓練で騒音が夜間も激化し、睡眠不足になった児童が学校を欠席する事態を招いた。さらに四つのヘリパッドを新設し、騒音にさらすのである。 これが首相の言う「負担軽減」である。高江の状況を見れば移設条件付き返還の「負担軽減」は、まやかしであることは明らかだ。 返還されるのは、米軍が「使用不可能」としている場所である。返還は「負担軽減」を目指したものではないということだ。だが、首相は面積の広さを殊更強調し、ヘリパッド新設を伴う一部返還を「負担軽減」と強弁した。国民の誤解を招くことを危惧する。  ・・後略
 

県警「命綱」は「人を支えられない」 市民縛ったロープ、製造業者が明言  2016年10月1日

東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設で、28日に米軍提供施設内の工事現場周辺で機動隊員が抗議市民をロープで斜面を引き上げて排除した件で、ロープが人や物を支える用途では作られていない標識用のロープだったことが30日、分かった・・後略

高江ヘリパッド 国、36台分砂利搬入 市民ら提供区域内で抗議  2016年9月30日

陸自配備決議は「横暴」 石垣で集会 市民ら市議会批判  2016年9月30日

石垣市への自衛隊配備問題で、市議会が配備を求める決議を与党議員の賛成多数で可決したことに抗議するデモ行進と市民集会(同実行委員会主催)が29日、市内で行われた。市民約200人が参加し「市議会の横暴だ」と怒りの声を上げ、集会では抗議決議を採択した。・・後略

基地建設強行許さない 東京で2500人抗議  2016年9月29日

米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設、北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を強行する政府が沖縄の民意を強権で押しつぶしているとして、「『止めよう!辺野古埋立て』国会包囲実行委員会」は28日夕、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で「9・28日本政府による沖縄の弾圧を許さない集会」を開いた。県民や市民団体などから約2500人(主催者発表)が参加。「沖縄と共に闘うぞ」などと声を上げた。沖縄から駆け付けた沖縄平和運動センターの大城悟事務局長は「今も多くの支援があるが、もっと多くの人が高江や辺野古に足を運んでほしい」と呼び掛けた。

首相説明の約170倍 米軍ヘリパッド建設 整備は計163ヘクタール  2016年10月4日

防衛省は3日の衆院予算委員会で、米軍北部訓練場(沖縄県東村・国頭村)のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設計画を巡り、関連する整備面積は着陸帯のほか無障害物帯、進入路、工事用道路、米軍に追加提供された宇嘉川河口部分など合計で「162・93ヘクタール」に上ることを明らかにした。

 安倍晋三首相は9月26日の所信表明演説で、北部訓練場の約過半となる4千ヘクタールの返還条件としているヘリパッド建設計画について、「0・96ヘクタールに移設する」と強調。直径45メートルのヘリパッド六つの合計面積だとの認識を示していたが、首相の所信表明での説明の169倍の面積が関連して整備されることになる。 ・・後略
 翁長知事「強く抗議」 ハリアー飛行再開・四軍調整官表明  2016年10月5日

「トイレにも行けず」 高江、座り込み女性に体調不良  2016年10月5日

米軍北部訓練場の新たなヘリパッド建設に反対する市民ら約200人は、5日午前7時から東村高江のN1地区ゲート前に座り込み「工事を止めて」などのプラカードを掲げながら、抗議の声を上げた。砂利を積んだダンプカー12台と建設資材を搭載したトラック3台が同ゲートに入った。 午前9時半ごろ、機動隊などは座り込みの市民らを排除した。この中で、体調不良を訴える女性もいた。沖縄平和運動センターの山城博治議長は「排除された市民らは機動隊にバスとバスの間に閉じ込められ、1時間もトイレに行けず、排ガスを吸わされたことはおかしい」と強く批判した。

沖縄県警、「全員の顔記録」指示 北部訓練場内の抗議撮影  2016年10月8日

官房長官の視察ヘリに抗議 250人が「帰れ」と連呼  2016年10月8日

「露骨で大人げない」 名護市長、会談なし批判  2016年10月9日

来県中の菅義偉官房長官は8日、名護市内で米軍基地所在の北部4町村長や米軍普天間飛行場の移設先に近い同市の久辺3区長らと会談した一方、辺野古移設に反対する稲嶺進名護市長には会談の打診もせず、設定しなかった。稲嶺市長は8日、本紙取材に「いわゆるアメとムチ、分断工作のそのものではないか。こんなにやっぱり露骨にやるというのも、何か大人げない」と批判した。・・後略

菅長官が自民県連、8市長らと会談  2016年10月9日

北部訓練場の年内返還、菅氏が明言 知事「大変歓迎する」  2016年10月9日

【北部訓練場一部返還】菅氏、県政のアキレス腱狙う  2016年10月9日

菅義偉官房長官は8日の翁長雄志知事との会談で、米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事が「順調に進んでいる」と報告した上で、工事完了を条件とする同訓練場の約半分の返還について、年内実現を目指して米側と交渉していると明言した。翁長知事は年内返還を「歓迎」すると表明した。知事はこれまで「一方的に工事を進める政府の姿勢は到底容認できない」と移設工事を批判してきたが、この日は工事の手法を批判することはなかった。政府側は知事の"お墨付き"を得たと政治利用し、工事をより強行に進めるとみられる。・・中略・・ 北部訓練場のヘリパッド移設工事を巡って、知事を支える「オール沖縄」勢力を構成する県政与党からは、知事に工事反対を明確に表明するよう求める声が上がっている。だが県政は返還計画を定めたSACO(日米特別行動委員会)合意を支持する点から難しい立場にある。 菅氏は会談の話題を北部訓練場の「返還」に集中させ、知事の「歓迎」を引き出すことで、県政の"アキレス腱(けん)"を狙う意図もうかがえた。翁長知事がこの問題でどのような対応を取るか、工事完了が年内に迫る中、佳境を迎えた。
<社説>北部訓練場返還 負担生むSACOの矛盾  2016年10月10日

菅義偉官房長官が米軍北部訓練場の約半分を年内に返還すると表明した。翁長雄志知事は「SACO(日米特別行動委員会)合意で重要なのでよろしく」と応じ、「大変歓迎」と評価した。 しかし、北部訓練場の返還は東村高江集落を囲むようにヘリパッドを新設するという条件付きで、反対運動が激しくなっている。
 1996年に発表されたSACO最終報告は普天間飛行場の全面返還を含む11施設、約5002ヘクタールを返還すると決めた。北部訓練場の53%に当たる3987ヘクタールも盛り込まれた。
 しかし、11施設の返還は遅々として進んでいない。報告から19年後の2015年3月末で返還されたのは454ヘクタール、わずか9%だ。 それはなぜか。ほとんどが旧施設の県内移設を条件にしているからである。普天間飛行場は政府が移設先とする名護市辺野古の新基地計画が県民の強い反対を招いている。那覇軍港は01年に浦添市が受け入れを表明したものの、根強い反対があり進んでいない。北部訓練場のヘリパッドは最も近い民家からわずか400メートル、しかも環境アセスの想定になかったMV22オスプレイ用の大型である。
 辺野古も高江も住民の基地負担は確実に増す。15年から米軍が使う二つのヘリパッドは、夜間に99・3デシベルの騒音が確認され、高江の住民が被害を受けている。北部訓練場の返還部分は米軍が「不要」と明言した場所にもかかわらず、日本政府は「沖縄の基地負担の軽減」と印象操作をしている。
 沖縄の負担軽減をうたったはずのSACO最終報告が新たな基地負担を生む。この矛盾は、最終報告に沖縄の意見が入っていないからだといえる。・・後略
 

翁長知事、移設工事容認を否定 北部訓練場年内返還「歓迎」発言 県議会特別委で謝花公室長 

2016年10月11日

・・前略・・「歓迎する」と表明したことへの質問が相次いだ。この発言について、翁長知事は同訓練場の部分返還の条件となっているヘリパッド移設工事も容認したのかという質問に対し、謝花喜一郎知事公室長は「今朝知事にも確認したが、そういうことは毛頭ないと明言していた」と否定した。照屋守之氏(沖縄・自民)への答弁。・・中略・・知事は「課題も認識している」ことから、菅氏本人には年内返還を「歓迎する」ではなく「承った」との表現で応じたと説明した。渡久地修氏(共産)への答弁。
 照屋氏がヘリパッド移設計画に反対する選択肢はあるのかと質問したのに対し、謝花氏は「ヘリパッドでオスプレイが使われることには反対だ。工事が強行に進められている中で今、容認はできない」とした上で「県庁内で『反対か賛成か』という議論はできていない」とした。

高江で220人座り込む 県外から150人参加、反対に共感  2016年10月11日

・・前略・・ この日はフォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム、東京)の呼び掛けで、北海道から九州の参加者約150人が座り込みに参加した。排除する機動隊員や砂利を積んだダンプカーに向かって「帰れ」「基地造りの手助けはやめろ」などと声を上げた。・・後略

高江で300人座り込み うるま、那覇市からも参加 正午まで砂利搬入なし 2016年10月12日

・・前略・・12日午前、東村高江のN1ゲート前で座り込み「やんばるの森を破壊するな」などと書かれたプラカードを掲げながら、建設に対する抗議の声を上げた。 毎週水曜の一斉行動に当たる同日、同ゲート前にはうるま市や那覇市からの島ぐるみバスで参加した人たちを含め、300人以上が駆け付けて抗議活動を展開した。正午までに砂利を積んだダンプカーの搬入は確認されなかった。・・後略

「ヘリ飛ぶ前に工事止めて」 沖縄・高江の住民、海外へ反対訴え  2016年10月14日

「いかなる外来機も禁止」 宜野座村議会が抗議決議 ハリアー機墜落  2016年10月14日

米海兵隊のAV8Bハリアー本島東沖墜落事故を受けて宜野座村議会(小渡久和議長)は14日、臨時議会を開き、事故原因の追及とハリアー戦闘攻撃機による飛行訓練の一切の中止を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決した。・・後略

<高江を訪ねて>厳然とある「沖縄差別」 香山リカ(精神科医)  2016年10月15日

 沖縄は沖縄人のものだ。沖縄のことは沖縄人が決めればよい。東京に住む私は基本的にそう考えている。
 しかし、いま辺野古や高江などで沖縄人の自己決定権が根底から奪われる事態が起きている。それについて本土のマスコミは多くを報じず、一般の人たちの関心も必ずしも高くない。なぜ日本の一部である沖縄県で起きている事態に、本土の人たちは目を向けようとしないのか。それは、どこかで「沖縄は(本土とは)別だから仕方ない」という気持ちがあるからではないか。実際に、昨年は人気作家が自民党の党本部を会場として開かれた会合で、「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」となどと発言したこともあった。 これらは沖縄に対する差別の意識に他ならない。私は精神科医だが、障害者への差別の問題にかかわってきた身として、日本の特定の地域に向けられている差別を看過することはできないと考え、"高江の現実"を見るために短期間であったがヘリパッド建設が進められている地区に赴いた。
 私が想像していたのとは違い、高江での抗議には「国会正門前の広場」といった拠点があるわけではなく、広大な米軍北部演習場を囲むフェンスのいくつかのゲート前や工事車両が通る道路などに市民が小グループを作って分かれ、それぞれの立場で抗議活動をしていた。座り込みをする人たち、ひとりプラカードを掲げる人、工事関係者の出入りをチェックする人などがいたが、いずれも組織だって行動しているわけではない。しかもその多くが高齢者で、ネットでしばしば伝えられるような暴力的行動はいっさいなかった。
 驚いたのは、彼らを取り囲む警察官や機動隊員の多さだ。「全国から500人」とも伝えられている屈強な隊員を乗せてきた車両のナンバープレートには、東京や大阪、愛知などの地名が書かれている。
 機動隊員は、座り込みをする市民をいわゆる"ゴボウ抜き"とやり方で、強制的に排除していた。ひとりが脇に手を入れ、別の隊員が足を持ち、まるで荷物を運ぶようにその場から道端に移動させる。暴れるなどして強く抵抗する人はいないが、みな悔しそうな顔をしていた。

圧倒的な力に恐怖

 そして東京に戻る朝、私自身も強烈な経験をすることになった。砂利を運搬するトラックを監視する自家用車の隊列に加わっていたところ、機動隊に突然、停車を命じられて車の前輪に車輪止めをつけられ、3時間にわたってその場から一歩たりとも動くことを許されない、という拘束状態に置かれたのだ。そこから動けない理由を尋ねても、仕事の都合があると言っても、いっさいの答えはない。同じように移動を禁じられた高齢女性が「トイレに行きたい」と訴えたが、それでも「動かないで」と同じ言葉が繰り返された。どんどん気温が上がり、車内に座っていて体調を崩し外に出て座り込んだ若い女性は、涙ながらに「おかしいじゃないですか。どうしてトイレにも行かせてもらえないのですか」とつぶやいていたが、それにも答えはない。私も「飛行機の時間が迫っている」と言ってみたが、「何時の便ですか?」といった人間らしい会話が始まることはついになかった。
 私自身、恥ずかしい話だが、ここまで顔や名前を持つ「個人」として扱われなかった経験はなく、圧倒的な力の前に言葉さえ通じないことの恐怖を身をもって味わうことになったのだ。
 その後、抗議する人たちの逮捕が続き、現在も演習場内で伐採が進められている森に入って防衛局員と対峙していた男性が「傷害」の容疑で逮捕され、名護署での勾留が続いている。彼と行動を共にしていた人に直接、話を聴く機会があったが、容疑に相当するような暴力的な行為などはなかったという。
 もし、これが東京で起きていたらどうだろう。突然、自動車を止められて動かぬように拘束させられたり抗議活動中の接触などで逮捕されたりしたら、「人権侵害だ」「権力による弾圧だ」と大騒ぎになるはずだ。それがなぜ、本土の人たちは「沖縄なら仕方ない」「抗議する側にも問題がある」といった雰囲気となり、目を背けようとするのか。これは紛れもなく差別であろう。日本国内にこれほど厳然とした特定地域への差別があることのおかしさを本土の多くの人たちに知ってもらうのが私の役割だ、といま強く思っている。
(香山リカ 立教大教授・精神科医)

北部訓練場、違反ダンプで砂利搬入か 表示番号を無記載  2016年10月16日 08

米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設で、砂利の搬入に使われているダンプカーに複数の法令違反の疑いがあることが分かった。ダンプ規制法に基づいて荷台の背面や側面に表示が義務づけられているダンプ表示番号がない車両が、これまで砂利を搬入してきたのが写真記録から確認できる。過積載につながる懸念がある、荷台の枠を高くする板状の「さし枠」を取り付けて道路運送車両法に違反しているとみられる不正改造の車両などもあった。 後略

高江への機動隊派遣中止求め 都民314人が都に監査請求  2016年10月17日

都内の市民団体「警視庁機動隊の沖縄への派遣中止を求める住民監査請求実行委員会」ら314人の都民が17日、米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設で警視庁機動隊員が派遣されているのは違法、不当な公金支出だとして、東京都監査委員に対して住民監査請求書を提出した。

高江N1でトラック、重機搬入 機動隊が抗議を強制排除  2016年10月17日

鉄線2本切り逮捕 沖縄・高江で米軍ヘリパッド抗議の山城議長 沖縄県警が器物損壊疑い

2016年10月18日

「鉄線危ないので外しただけ」 高江、山城議長逮捕に抗議  2016年10月18日

国頭村と東村にまたがる米軍北部訓練場ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に関連して沖縄平和運動センターの山城博治議長逮捕から一夜明けた18日午前、同訓練場N1地区ゲート前に集まった市民からは「卑劣なやり方だ」「不当逮捕だ」などと抗議の声が上がった。 市民約50人は午前8時ごろに集会を開いた。県統一連の瀬長和男事務局長は「話があるからと呼び出して逮捕するのは卑劣なやり方だ。辺野古と高江では警察のそういった手法がまかり通っている」と批判した。 一方、マイクを握った別の男性は「私たちは有刺鉄線が危ないので外した。ペンチを使ったのも事実だが危ないことはしていない」と述べた。 ・・後略

<社説>高江の警察活動 「二重基準」を疑わせる  2016年10月19日

・・前略・・警察法3条にはこう書かれている。「警察の職務を行うすべての職員は日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且(か)つ公平中正にその職務を遂行する旨の宣誓を行う」
 現状を見る限り、北部訓練場周辺では警察官としての初心を忘れたとしか思えない警察活動が続く。
 工事に必要な砂利を運搬するダンプカーに道路車両運送法違反の不正改造などが疑われるとして、沖縄総合事務局陸運事務所は、市民からの資料提供を受け、業者に実態を確認する予定だ。
 現場にいる警察官は、不正改造が疑われる車が目前を通過したのに、なぜ注意や指導をしなかったのか。
 抗議の市民らはブレーキランプ故障などわずかな整備不良でも注意されるという。目視だけで注意できるのであれば、ダンプカーにも同様に対処すべきであろう。市民から恣意(しい)的とみられかねない取り締まりは慎むべきだ。
 一方、名護署は抗議活動の中心人物である沖縄平和運動センターの山城博治議長を器物損壊容疑で逮捕した。提供施設と工事現場を隔てる有刺鉄線を切断したというのが逮捕容疑だ。この問題に対し、抗議活動の市民らは「抗議活動の中心人物を狙った」「運動を萎縮させる目的」などと批判している。
 工事を推進するためなら多少の不都合は見過ごしても、抗議する市民の側は徹底的に取り締まるという二重基準がありはしないか。これまでにも工事車両を警察車両が先導したり、工事車両の荷台に警察官を乗せて運んだりする例もあった。「不偏不党、公平中正」の理念を疑わせる。・・後略

市民を「土人」呼ばわり 機動隊員、沖縄のヘリパッド建設現場 識者ら差別発言と批判 2016年10月19日

高江警備暴言、「シナ人」も 別の大阪府警機動隊員  2016年10月19日

東村と国頭村に広がる北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の建設を巡り、大阪府警の警備隊員が「黙れ、こら、シナ人」と暴言を吐いていたことが19日分かった。県警が同日午後、明らかにして謝罪した。警備活動ではこの発言以外にも抗議運動参加者を「土人」と呼ぶなど、差別的な表現が相次いで確認されている。・・後略
機動隊員「土人」発言 激しい罵倒 その精神構造から見えるものは  2016年10月19日

沖縄県の東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に抗議する市民に対し、現場で警備に当たる機動隊員が18日、「土人」と発言したことに対し、市民や識者からは「沖縄への差別だ」「公務中の侮辱発言はおかしい」などと指摘する声が上がった。

 「土人」という発言は18日午後、金網越しに抗議行動をする市民らが「基地やめろ」と金網を揺らすなどしたのに対し、機動隊員が「おい、早く、立ち去りなさい」「立ち去れ」などと激しい命令口調で繰り返した。さらに「触るなくそ」「どこつかんどんじゃ、ぼけ」などと罵倒した後、「土人が」と吐き捨てるように発言した。
 これを受け、市民は「おい、ヤクザ」などと反発した。暴言を吐いた同じ機動隊員に蹴られたとの証言も複数市民から上がっている。
 発言を動画で撮影していた作家の目取真俊さんは「見下しており、沖縄に対する侮蔑だ。(このような発言をしても)何とも思わないことが時代の風潮になると怖い。このような機動隊に県民の税金を使わせていいのか」と強く批判した。 現場近くのフェンス沿いで抗議に参加した名護市の30代女性は「大阪府警の機動隊だと思うが、巻き舌気味で全て脅しに聞こえた。まるで暴力団のようだった」と語った。・・後略

警察「土人」発言 「構造的差別」責任は政府に  2016年10月20日

 ・・前略・・「土人」発言は、反対運動の市民だけでなく、県民の心を深く傷つけた。警察への信頼も大きく失墜させた。機動隊員の監督責任者は県民に対し明確に謝罪し、発言した隊員を警察法や侮辱罪などの法令に基づき厳正に処罰すべきだ。
 現場の機動隊員は全国から招集されている。隊員の差別発言は、監督者の責任も問われる。隊員に対し、沖縄の基地問題や建設に反対する民情を理解させ、公正中立の立場で職務を行わせる指導、監督をおろそかにした責任は大きい。
 フェンスを挟んで向き合う市民への「土人」の暴言は、行動を抑制するのでなく挑発そのものだ。工事を邪魔する者は排除すればいいという、安倍政権、沖縄防衛局の意思を反映したものだろう。
 訓練場内のフェンスの鉄線を切断したとされる沖縄平和運動センターの山城博治議長は、防衛局職員の通報で逮捕された。反対運動を萎縮させたい防衛局の意を酌む「狙い撃ち」と批判されている。
 反対行動を抑圧する警察活動の、事実上の指揮者は防衛局、政府である。大規模な機動隊投入、不当な車両検閲、市民や新聞記者の排除、自衛隊ヘリの投入と、ヘリパッド建設のため政府はあらゆる手段を取っている。
 建設を至上命題とする政府の意を受け、あるいは指揮の下に、警察法が規定する「公平中正」を逸脱する警察活動が行われているのは明白だ。・・後略

「土人」発言報道「やり過ぎ」 松井大阪府知事が見解  2016年10月20日

・・前略・・ 松井氏は19日夜、短文投稿サイト「ツイッター」で「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのが分かりました。出張ご苦労様」などとも投稿していた。【

「魂の殺人だ」 大阪府警前 50人、派遣撤退求める  2016年10月20日

大阪府警から派遣された機動隊員が北部訓練場のヘリパッド新設に抗議する市民に「土人」「シナ人」などと侮蔑的な発言をしていたことを受け、大阪市にある大阪府警本部前にはインターネットやSNSで呼び掛け合った市民ら約50人が詰め掛け、「沖縄から機動隊を戻せ」などと抗議の声を上げた。

 「差別をやめろ」「沖縄の方にみんなで謝れ」。抗議行動は1時間半に及び、市民らは代わる代わるマイクを握って思いを語った。

 1年以上にわたって、毎月来県し、基地建設反対の声を上げ続けているという三浦俊一さん(69)=大阪府=は琉球新報などの記者が8月20日に機動隊に拘束された現場にも居合わせた。「他府県から機動隊が沖縄に入ってきてから過激になっている」と語り、「今回の発言はあまりにもひどく、沖縄の人への"魂の殺人"だ」と憤った。

 労働組合の職員を務める西山直洋さん(48)=大阪府=は今回の発言について「沖縄を植民地だと思っている発言だ」と指摘した。