琉球新報9月

2019年01月14日 10:19

「夢と誇りある沖縄に」 玉城デニー氏の選挙母体発足 県知事選

2018年9月1日

9月30日の県知事選に出馬する衆院議員の玉城デニー氏(58)の選挙母体「平和・誇りある豊かさを!ひやみかちうまんちゅの会」が8月31日、那覇市内で事務所開きを実施した。事務所は那覇市古島の古島テラスを利用する。

 玉城氏は「イデオロギーよりアイデンティティー、どんどん手をつないで沖縄を平和な島にしよう。自然環境を大事に、あらゆる人を受け入れ、子どもたちが世界に飛び立っていく拠点にしていこう。翁長知事がつくろうとした沖縄は、そういう夢ある沖縄、誇りある沖縄の姿だった」と訴えた。その上で「自分の信念であるぶれない姿勢を、翁長知事から受け取った信念に重ね合わせ、デニーカラーを、つくり上げる『新時代沖縄』の姿に表していく」と支持を呼び掛けた。

 選挙母体は県政与党、労働組合、市民団体、企業などで構成する。会長には金秀グループ会長の呉屋守将氏が就任した。本部長は仲里利信前衆院議員が務める。集会では、呉屋会長はじめ照屋寛徳衆院議員、赤嶺政賢衆院議員、城間幹子那覇市長らが登壇し、激励した。冒頭、8月8日に死去した翁長雄志知事を追悼し、全員で黙とうした。

県、辺野古埋め立て承認を撤回 「法基づき適正に判断」

2018年9月1日

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、富川盛武、謝花喜一郎両副知事は8月31日午後、県庁で記者会見を開き、仲井真弘多前知事による辺野古の公有水面埋め立て承認を撤回したと発表した。国は新基地建設を進める法的根拠を失い、海上の工事は中断する。翁長雄志知事の死去後に撤回の権限を引き継いだ謝花副知事は「辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の思いをしっかりと受け止めた上で、公有水面埋立法に基づき適正に判断した」と述べた。

 沖縄防衛局が当初8月17日を予定していた辺野古海域への土砂投入は当面不可能となる。政府は、撤回の効力を止める執行停止などを裁判所に求める法的な対抗措置を検討している。県知事の最大の行政権限である撤回を実行したことで、国と県の対立は重大局面を迎え、辺野古新基地を巡って再び法廷闘争に入る。

 会見に先立ち、県の渡嘉敷道夫知事公室基地対策統括監、松島良成土木建築部土木整備統括監が嘉手納町の沖縄防衛局を訪れ、井上主勇(かずみ)調達部長に埋め立て承認取消通知書を手渡した。

 会見に臨んだ謝花氏は、撤回処分に対して防衛局から反論を聞いた聴聞手続きの結果として(1)事前協議を行わずに工事を開始した違法行為(2)軟弱地盤、活断層、高さ制限および返還条件など承認後に判明した問題(3)承認後に策定したサンゴやジュゴンなどの環境保全対策の問題―が認められ、撤回の根拠になったとした。

 謝花氏は「防衛局の主張の一部に理由があると認められるものの、総合的には主張に理由がないという(県総務部の)聴聞主宰者の意見を十分に参酌した。違法な状態を放置できないという行政の原理の観点から、承認取り消しが相当であると判断した」と述べた。

 撤回の時期について富川氏は「聴聞報告書ができた時点から総合的、慎重に判断してきた行政手続きの結果であり、政治的な判断は一切ない」と強調した。

 辺野古新基地建設阻止を公約とした翁長知事は、7月27日に埋め立て承認の撤回に踏み切る方針を表明した。しかし、防衛局の主張を聞く聴聞手続きの途中の8月8日、翁長氏が急逝する事態となった。それでも県は9日に聴聞を開催し、手続きの延長を求めた防衛局の訴えを退けて聴聞を終結した。20日には聴聞主宰者の県総務部から聴聞の報告書と調書が提出され、撤回を実行する条件が整っていた。

撤回受け 拳に力 辺野古集中行動 800人「新基地阻止貫く」

2018年9月2日

県の埋め立て承認撤回から一夜明けた1日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前で新基地建設に反対する集中抗議行動が行われた。県内各地から市民約800人(主催者発表)が参加し、待ち望んでいた「撤回」を改めて祝った。ガンバロー三唱で互いにつないだ手を高々と突き上げ、「翁長知事の遺志を受け継ぐ。新基地建設断念を実現させる」と誓い合った。

 市民は早朝から次々とゲート前に集まった。沖縄平和運動センターの大城悟事務局長が「昨日、県がついに埋め立て承認を撤回した」と語り掛けると、市民は拍手し、指笛を鳴らして喜びをかみしめた。

 長年、現場の抗議活動をけん引してきた関係者も次々とマイクを握った。

 沖縄平和運動センターの山城博治議長は「撤回により国は工事を進める根拠を失った」と強調し「ゲート前のフェンスや山型の鉄板をすぐに撤去しろ」と訴えた。

 恩納村から参加した大城勝泰さん(74)は「翁長知事が新基地反対の県民の思いを背負って撤回の道筋を作った。今度は私たちが頑張る番だ」と語った。

辺野古県民投票、条例制定を請求 市民、県に署名9万2848筆提出

2018年9月6日

沖縄の米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票実施を求める「『辺野古』県民投票の会」(元山仁士郎代表)は5日、条例制定を知事職務代理者に直接請求した。職務代理者の富川盛武副知事が20日以内に県議会を招集し、条例案を提案する。 

 元山代表らはこの日、県庁を訪れ、条例案と署名簿を県に提出した。元山代表は「県議が真剣に民意を酌んで条例案を審議し、速やかに可決・制定すること、県民投票の早期実施と市町村の円滑な協力に期待する」と語った。

 条例案を受け取った謝花喜一郎副知事は「短期間に多くの署名が集まり、(死去した)翁長知事も大変喜んでいると思う」と語った。同会が集めた県民投票条例制定を求める署名は、市町村選挙管理委員会の審査の結果、有効署名数は41市町村で9万2848筆に上った。総署名数は10万950筆だった。押印漏れなどが無効となった。

 県議会に提出する際、知事職務代理者は意見を付ける。ただ、趣旨は変えずに字句や表現の修正にとどまる見込み。県議会に条例案が提出されると、県民投票の会の代表者が県議会で意見を述べる機会を得る見通しだ。条例案通りに可決した場合、公布後6カ月以内に投票を実施する。県民投票の会が出した条例案は、名護市辺野古の米軍基地建設のための埋め立てに、賛成か反対かを選ぶ形式だ。いずれか過半数の結果が投票資格者総数の4分の1以上に達した場合、知事はその結果を告示し、尊重しなければならないとしている。

知事選公開討論会 辺野古巡り相違 2018年9月6日

30日投開票の県知事選に向け、主な立候補予定者2氏を招いた公開討論会(日本青年会議所沖縄ブロック協議会主催)が5日夜、南風原町立中央公民館で開かれた。前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新推薦=と衆院議員の玉城デニー氏(58)が出席した。最大の争点である米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、佐喜真氏は辺野古が唯一の解決策とする政府方針に異を唱えたら「(普天間の)固定化を目指しているのかと言われかねない。われわれには限界がある」と述べ、反対しない姿勢を示した。玉城氏は「米国の法律に照らせば、辺野古の基地は造れない。政府に話し合いを求める」と述べ、新基地阻止の考えを示した。 

 知事選の争点について、佐喜真氏は「普天間飛行場の返還。原点は危険性の除去だ」と主張。玉城氏は現県政が実行した「埋め立て承認『撤回』の是非だ」と述べた。佐喜真氏は、承認撤回について「これから法的な争いが始まる。日本は法治国家だ。法に基づき判断しないといけない」と評価を避けた。玉城氏は「政府には沖縄と協議する姿勢がない。撤回は法律に基づいた正当な手続きだ」と評価した。
 経済振興関連では、国会で可決したカジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法を受けた沖縄へのカジノ導入について、佐喜真氏は「新たな観光資源として研究する必要がある」と否定せず、玉城氏は「必要ない」と述べた。
 討論会後、佐喜氏と玉城氏の2人はそれぞれ記者団の取材に応じた。辺野古移設の是非を巡る発言の真意について佐喜真氏は「一般論だ。外交は国の専権事項で、(知事に)外交権があればやる」と答えた。玉城氏には「法治国家の法を守る長として県民にプロセスについての説明が足りなかった」と述べた。玉城氏は「(佐喜真氏は)普天間の返還にこだわり、辺野古の是非について相変わらず何も言わなかった。あえて相違点にしなかったことが皆さんに伝わった」と話した。