琉球新報7月

2019年08月31日 16:42

<金口木舌>米軍基地を笑う

2019年6月30日 06:00

 沖縄での街頭演説がオスプレイの騒音にかき消され、思わず「ゲラウェイ(あっち行け)」と叫ぶ総理。辺野古に伝わる海水を使った伝説のゆし豆腐の口当たりが「ジャリジャリ」する―

▼演芸集団FECのまーちゃんこと小波津正光さん(44)が企画・脚本・演出を務める「基地を笑え! お笑い米軍基地15」のワンシーンだ。本島縦断オール新作ツアーの那覇での初日に足を運んだ。中高年の観客が多い中、若者や家族連れの姿も
▼「米軍基地」と「お笑い」は一見、懸け離れているが、小波津さんの芸人フィルターを通すと米軍の事件・事故は全てネタだ。客観的に笑うことで、沖縄の現状や社会全体の危うさなどを分かりやすく伝えている
▼県民はこれまでも逆境を笑いに変え、生きる糧にしてきた。沖縄の「チャプリン」と呼ばれた小那覇舞天さん(本名・全孝)は戦後、「ヌチヌグスージサビラ(命のお祝いをしましょう)」と生き延びた人たちを歌と笑いで癒やし、希望を届けた
▼小波津さんは毎年新作を生み出し、慰霊の月に県内各地で公演する。今年で15年だが「相変わらずネタに事欠かない。笑えない問題ほど、笑いにしてやる」と芸人魂はパワーアップしている
▼今日は名護市民会館で新作ツアーの最終公演。ファンの一人としては悩ましいが、将来、基地を笑わずに済む日が来ることを心から願う。

60年前の惨劇思い涙 宮森小で慰霊祭 米軍ジェット機墜落 2019年7月1日

児童ら18人が犠牲になったうるま市石川(旧石川市)の宮森小学校米軍ジェット機墜落事故から30日で60年を迎えた。この日、同校では午前9時半から遺族会と石川・宮森630会主催の60年慰霊祭が開かれた。県内各地から多くの人が足を運び、犠牲者に哀悼の意を表した。

 第1部では同校中庭の慰霊碑「仲よし地蔵」前で献花や焼香が行われた。遺族や地域住民、うるま市や県の関係者が参列し、黙とうをささげた。
 参列者は同じような事故が繰り返されぬよう、平和な社会実現を犠牲者に誓った。
 第2部は同校体育館に場所を移し、式典が開かれた。事故が発生した午前10時40分ごろに全員で再度黙とうした。宮森小6年生による平和を願う歌「ふくぎの木」の合唱などもあった。
 630会の久高政治会長は「沖縄の基地問題の象徴のような出来事だった。遺族の中には今でも涙を流す人がいる。県民の願いは米軍の事件事故がなくなることだ」とあいさつした。

参院選 辺野古移設 全国争点に 自民「着実に進める」/野党4党「中止」「反対」 2019年7月7日

21日投開票の参院選に向けた各党の選挙公約が出そろった。沖縄関連の政策を比べると、政権与党の自民党は米軍普天間飛行場の辺野古移設を進めることを明記した。これに対し、全国の1人区で候補者を一本化した立憲民主党など野党4党は辺野古移設の中止や反対で足並みをそろえて対立軸を明確にした。辺野古移設問題が全国的な争点の一つとして問われることになる。

 自民党は公約で、沖縄の基地負担軽減のため「普天間飛行場の辺野古移設や在日米軍再編を着実に進める」とした。沖縄振興についても1項目を設け「税財政含めて沖縄振興策を総合的・積極的に推進」するとし、モノレールの3両化などを盛り込んだ。

 連立を組む公明党は政策集では移設問題に言及していない。だが、山口那津男代表は3日の日本記者クラブ主催の党首討論会で「党としては国の安全保障、防衛政策を基本的に推進していく立場」と述べ、推進する考えを示している。

 野党第1党の立憲民主党は、辺野古新基地建設は「民主主義と自治を空洞化させる暴挙」だとし、工事は中止するとした。普天間飛行場の返還に向け米国と「交渉を行い、粘り強く成果を求める」とした。

 国民民主党も県民投票などで示された民意や軟弱地盤の問題に触れ「辺野古の埋め立ては中止し、現行の移設計画は見直す」との立場を示す。

 共産党は新基地建設の中止と、普天間基地の無条件撤去を求めるとした。

 日本維新の会は普天間基地の負担軽減に取り組むとした。

 社民党は辺野古移設反対で、普天間飛行場は即時運用停止と閉鎖・撤去とした。

護岸2カ所から土砂陸揚げ 市民が抗議「戦争に向かう基地いらない」  2019年7月12日

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、沖縄防衛局は12日午前、海上輸送した土砂を米軍キャンプ・シュワブ沿岸のK8、K9護岸の2カ所から陸揚げし、基地内へ土砂を運んだ。基地建設に反対する市民らは抗議船1隻とカヌー5艇に乗り、「軍備の拡張を見過ごすわけにはいかない。戦争に向かう基地はいらない」などと訴えた。

  一方、キャンプ・シュワブのゲート前では午前9時から資材搬入があり工事関係車両51台が基地内へ入った。正午ごろには2回目の資材搬入が始まり、座り込む市民ら約50人が機動隊によって排除された。

新基地ノー! 教壇から新たな舞台へ 高良さん、改憲阻止誓う 2019年7月22日

7月21日に投開票された参院選沖縄選挙区は「オール沖縄」勢力が推す無所属新人の高良鉄美さん(65)が、自民新人の安里繁信さん(49)=公明、維新推薦=との事実上の一騎打ちを制した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設反対を掲げた高良さんの大差の勝利により、昨年の知事選、今年の県民投票と衆院3区補選に引き続き、改めて示した「新基地ノー」の民意。高良さんは「この1年間で4度示した民意は大きい。この民意をバックに論戦に挑みたい」と意気込み、新基地建設阻止を誓った。

 

 

 投票箱が閉まった午後8時ちょうどに「当確」を知らせるテレビの速報が流れた。玉城デニー知事らがいち早くガッツポーズする横で、身を乗り出して画面を凝視する高良さん。隣では妻の克美さん(60)が支援者からもらったというペンダントを握りしめる。自分の目で確認すると克美さんと目を合わせ、ようやく立ち上がって支持者らに頭を下げた。玉城知事に促されて勝利のカチャーシーを舞うと、支持者は指笛や拍手で合いの手を入れて喜びを分かち合った。

 憲法学者として35年間、琉球大学の教壇に立ってきた。平和を希求する憲法の理念を教え子たちに説いてきた。政治家への転身を打診されることはあったが、法科大学院設置など大学教授としての重責を考え、断念してきた経緯がある。

 退官を前にした昨年末、正式に参院選への出馬要請を受けた。「安倍政権の改憲を阻止する」。憲法の重要性を理解しているからこそ出馬を決意した。選挙戦が本格化する中、アメリカで暮らす長女沙葵(さき)さん(39)も応援に訪れ、連日、遊説に同行した。

 選挙戦で重点的に訴えてきたのは名護市辺野古の新基地建設問題と平和への思い。演説では、敗戦から日本復帰までの27年間、憲法の適用を受けなかった沖縄の問題に時間を割き、憲法の重要性を訴えた。初めての選挙戦。おぼつかなかった遊説も、日を追うごとに滑らかになっていった。

 「知る権利の象徴」としていたトレードマークの帽子を鉢巻きに替えて臨んだ。当選したこの日、「原点に帰る」と支持者らの前で帽子をかぶる"パフォーマンス"を見せたが、すぐに頭から取った。「これから国会の場で、皆さんの知る権利のために頑張る」。湧き起こる拍手の中、支持者に誓った。

「沖縄の痛み」都民に訴え れいわ公認の野原さん 落選も、21万票獲得 2019年7月23日

 「れいわ新選組」公認で東京選挙区(改選数6)に立候補した県出身の野原善正さん(59)は21日投開票の参院選で、20人の候補の中、21万4438票を集めたが8位となり、当選はかなわなかった。公明党の支持母体・創価学会の現役会員であることを前面に出し、選挙期間中は「いつまで沖縄に基地を押し付けるのか」と訴え、東京都民に自分事として考えるよう問い続けた。落選を受けて開いた会見では、「れいわ新選組」代表の山本太郎さん(44)が次期衆院選に向けて意欲を示す中、野原さんも出馬する意向を明言した。

 「のはらっ、のはらっ、のはらっ」。投票日前日の午後7時すぎ、東京・新宿駅西口の小田急百貨店前に野原コールが響き渡った。路上から歩道橋まで人があふれ、熱気に包まれた。

 ◆立候補の理由
 野原さんは沖縄創価学会壮年部に所属するが、昨年9月の沖縄県知事選では自公支持の候補ではなく、辺野古新基地建設に反対の玉城デニー氏を応援した。

 公示の4日午前。野原さんは新宿駅西口でマイクを握り「日米安保条約のプラス面を肯定される方々は、そのマイナス面を一手に引き受けている沖縄の現状をもっと真剣に考えてもらいたい。いつまで他人の不幸の上に自分の幸せを築くつもりでしょうか」と語気を強めた。都民や国民に向けて「どうぞ沖縄の痛みを、他人の痛みとしてではなく、自分の痛みとして真剣に考えてくれるよう切に希望する」と訴え掛けた。

 ◆衆院選に意欲
 東京選挙区には公明党代表で現職の山口那津男氏(67)も立候補していたが、野原さんは「なっちゃんとガチンコ勝負致します」と挑んでいった。

 辺野古新基地建設の容認も含め、安保法や共謀罪にも賛成した公明党に対する危機感があった。14日には東京・信濃町にある創価学会総本部前でもマイクを握った。「公明党には、平和・福祉という立党の精神に返ってもらいたい。」と繰り返した。今回は落選となったが21万余の票数について野原さんは「21万は実力不足」と支持者に陳謝した。次期衆院選への対応を記者から問われた山本さんがその場で出馬を打診すると、野原さんは「はい、喜んで」と応じた。