琉球新報7月

2018年12月25日 08:05

知事選候補選びヤマ場  告示まで4ヵ月  一本化へ調整、波乱含み2018年7月1日

任期満了に伴う県知事選(11月18日投開票)は11月1日の告示まであと4カ月に迫った。現職の翁長雄志知事(67)は2期目について、態度を明らかにしていないが、県政与党は翁長氏を擁立する方針を決定しており、一部政党はすでに政策づくりなどに着手している。一方、野党自民は、佐喜真淳宜野湾市長(53)を軸に候補者選考作業を進めており、7月上旬にも候補者を決定したい構え。8月中旬にも辺野古海域への土砂投入が想定される中、新基地建設の是非や沖縄振興策の評価などが争点となる。

 現在開会中の県議会6月定例会で翁長氏は、与野党双方から次期知事選への対応を問われたが、「今はしっかりと病気の治療を行いながら一日一日公務を着実にこなしていき、県民からの負託に応えていきたい」と明言を避けた。膵臓(すいぞう)がん切除手術後の定例会だっただけに、野党から体調を懸念する声が聞こえたが、与党からは「2期目に向けた強い決意を感じた」と2選出馬を期待する声が上がった。
 ただ、与党の一部には、翁長氏の体調を不安視する意見もある。そんな中、政党や労働組合などで翁長氏擁立に向けた調整会議(照屋大河議長)が1カ月以上開かれていない状況に、「危機感が足りない」(与党県議)との声も聞こえ始めるなど、政党間の連携不足を懸念する意見も上がる。一方、翁長氏が出馬しない場合の後継として、与党の一部からは謝花喜一郎副知事(60)を推す声もある。
 一方、自民を中心に組織する選考委員会(国場幸一委員長)の絞り込み作業は佐喜真氏を軸に「大詰めにきている」(翁長政俊県連会長代行)状況だ。佐喜真氏は26日に宜野湾市内で開かれた政治資金パーティーで「悩みながら政治家は決断する。知事選挙、皆の力でわが陣営に(県政を)取り戻そう」とあいさつするなど出馬に意欲を示している。
 ただ、出馬した場合、空席となる宜野湾市長の後継選びや市長の継続を求める声が強い後援会の理解など、地元の環境整備が依然課題となっており、最終的に出馬を決断できるかは不透明な状況だ。

 また、人選を巡っては、元沖縄観光コンベンションビューロー会長でシンバホールディングス会長の安里繁信氏(48)も出馬に意欲を示す。安里氏本人やその周囲は選考委員会が1カ月以上開かれていないことに不満を持っており、候補者の一本化に向けて波乱含みとなっている。
 一方、候補者選考と平行する形で、前回知事選で自主投票を決定した公明や市長選挙で連携を組む維新との調整も水面下で始まっており、候補者が決定次第、政党間の協力体制の構築を急ぐ考えだ。

「県民の声に耳を傾けろ」 ゲートへの資材搬入で市民ら抗議2018年7月5日

名護市辺野古の新基地建設を巡り米軍キャンプ・シュワブのゲート前では5日、約80人の市民が座り込んで抗議した。
 ダンプやミキサー車など資材を搬入する工事車両に対し「県民の声に耳を傾けろ」「県警機動隊は本来の仕事に戻れ」などと大きな声を上げて、新基地建設反対を訴えた。
 しかし、午前9時の資材搬入時に市民は、県警機動隊によって約15分ほどで強制排除された。市民の中には「沖縄を本土防衛の捨て石、盾にするな」と書かれたプラカードを掲げる市民もいた。

辺野古、土砂投入阻止へ決断 翁長知事、23日にも撤回方針表明 「聴聞」手続きへ

2018年7月19日

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄県の翁長雄志知事は18日までに、辺野古海域への土砂投入前に埋め立て承認を撤回する方針を固めた。県は17日に代替施設建設事業の即時工事停止を要求する行政指導文書を防衛省沖縄防衛局に発送しており、即時に工事が中止されないと判断すれば撤回表明に踏み込む。23日にも三役、部局長らで方針を確認し、撤回に向け、防衛局から弁明を聴く「聴聞」手続きを開始することを表明する。複数の県関係者が明らかにした。

 沖縄防衛局は護岸で囲んだ海域に土砂を投入する本格的な埋め立て工事に、8月17日にも着手すると県に通知している。翁長知事は前県政が認めた埋め立て承認を撤回することで承認の効力を無効にし、土砂投入前に工事を停止させることを狙う。
 17日に沖縄防衛局の中嶋浩一郎局長宛てに送付した県の行政指導文書は、地盤強度を表す「N値」がゼロを示す軟弱地盤の存在が国の調査で見つかったデータを示し「設計概要説明書に従って工事が進められるならば、護岸の倒壊等の危険性を否定することはできない」と指摘。「安全性を確認できないことを認識しながら、殊更にこのことを隠したまま着工して工事を強行してきた」など行政文書としては異例の厳しい文言で国の姿勢を追及した。その上で、工事の即時停止を求めている。
 撤回は、承認後の事情の変化を理由に、公益上の必要が高いとして、許認可などの行政処分を取り消す措置。埋め立て承認の撤回には、事業者である沖縄防衛局の言い分を事前に聞く「聴聞」の手続きが必要とされている。
 行政手続法は事業者側に通知してから聴聞を実施するまで「相当な期間」を置くことを定めており、県は期間を1~2週間と想定する。さらに、聴聞後に防衛局の弁明内容を分析する期間として2週間前後を想定している。
 県は8月17日に予定される土砂投入前に撤回したい考えだ。

県民投票署名 法定超え 3万3722筆、秋以降に実施

2018年7月18日

沖縄県名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票の実現を目指す「辺野古」県民投票の会は17日、県庁で記者会見を開き、県民投票実施に必要な署名が3万3722筆に達したと発表した。同会が県民投票条例の制定を県知事に直接請求するには、県内有権者の50分の1に当たる2万3千筆余の署名を集める必要があるが、これを約1万筆上回った。手続きが順調に進み、県民投票の条例案が10月末までに可決されれば、早くて秋、遅くとも来年4月頃までには実施される見通しだ。

 県民投票の会は今月23日まで署名集めを実施し、その後10日以内に各市町村選管に署名簿を提出する。各選管による審査を経て、同会は県知事に条例制定を請求する。県知事は請求から20日以内に県議会を招集し、条例案や関連予算案を提出する必要がある。県議会与党会派は県民投票を支持しているため、条例は可決される見通しだ。
県民投票「一筆でも多く」 署名活動終盤 若者にも関心広がり2018年7月21日

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設について賛否を問う県民投票を目指す署名活動は期限の23日まであと2日に迫り、終盤を迎えている。実施に必要な署名数は超えたが、署名審査に備え少しでも多くの署名を集めるとともに、県民投票への関心を高めようと「辺野古」県民投票の会は県内各地で締め切り日まで署名活動を続ける。 

 20日午前、那覇市役所前で行われた署名活動には20代の若者ら5人が中心となり、幅広い世代に向け「沖縄のことは沖縄で決めよう」などと呼び掛けた。
 「辺野古」県民投票の会メンバーの知人に誘われ、署名活動に参加する平井裕渉(やすたか)さん(23)=豊見城市=は「賛成でも反対でも良いので考えよう」と呼び掛けた。基地問題については「昨年までは全く考えてこなかった」と明かす平井さん。アジアを訪れた際、沖縄の過重な基地負担が海外から見ても異常だと知り、意識が変わった。「県民投票は、18歳以上の有権者が当事者意識を持って基地のことを考えるきっかけになる」と考えている。
 「普天間基地ができた後、周囲に人が住み始めた」「辺野古の抗議活動は皆、お金をもらっている」などと誤った情報がインターネット上に拡散され、疑問を持たず信じる同世代の若者も多いという。平井さんは「根拠のない情報に惑わされずに、正しい情報に基づいて考えていくことが大切だ」と強調した。
 一方、辺野古新基地建設が続く名護市でも、署名活動が展開されている。市役所に近い同会事務所を拠点に20日までに約3千筆を集めた。署名活動をする阿波根数男さん(69)は「特に沖縄戦を体験している世代は、カンパしてくれる人も多い」と話す。
 若い世代についても関心が高く、選挙権がない中高生もビラなどを手に取っているという。「自分たちの問題と捉えてくれているようでうれしい」と目を細める。
 今週末も阿波根さんたちは街頭で署名活動を行う。「締め切り日まで一筆でも多く署名を集めたい」と意気込んだ。

分断に終止符、沖縄の未来へ 逃げずに覚悟の選択を 推進派も議論深めて 「辺野古」県民投票の会 呉屋守将顧問に聞く 2018年7月24日

名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票の実現を目指す「『辺野古』県民投票の会」の賛同署名数が、活動締め切りの23日を前に6万筆余に達した。県内有権者の50分の1に当たる2万3千筆の必要数を上回り、県民投票実施が現実味を帯びてきた。県民投票の会顧問の呉屋守将氏(金秀グループ会長)に狙いなどを聞いた。 

―県民投票を巡る方針の不一致もあり、オール沖縄会議の共同代表を辞めて市民運動に合流した。

 「特に1月の名護市長選の敗北が大きかった。翁長県政の4年間、首長選挙に負け続けてきた。選挙の争点にすることから逃げてきた陣営が、辺野古について暗黙の了解を得たといわんばかりのことを官邸を中心に喧伝(けんでん)する。本当にそうだと思うのであれば、そういう場を設けて県民の総意に耳を傾けるべきだろう」

 「やはり県民の意思を直接問う機会をつくることが我々の最大の武器であり、埋め立て承認撤回の有効な手立てになるというのが私の提起だった。知事選や国政選挙を通じて全県民的な民意は表されており、あえてリスクを冒すことはないという声もあった。オール沖縄会議の共同代表を辞めたのは、自分自身があえて『壊死(えし)』した部分であると引き受け、体全体にまひが広がる前に切って捨てた。そうすることで組織に緊張感を持ってもらうこともあった」

 ―政治の素人が集まった運動をどう見てきたか。
 「自分たちの将来のことは自らも関わって議論し考え、一定の結論も見たいという思いだと思う。マンパワーも金も圧倒的に足りない。でもその純粋さが伝わった。県民の中に凝縮された形で広がっている不満感、不安感が、署名が告知されるにつれて多くの賛同につながってきた。本当の意味でウイングの広いオール沖縄になってきた。そうした大きな分岐点に立つ市民運動だと思う」
 ―実施に向けての考え方は。
 「推進派が黙って、我々が一方的に票を伸ばして圧倒しても、それで本当に勝利とは言えない。彼らにも彼らなりの議論を深めてほしいし、深める中で矛盾点にも気が付くだろう。それは我々自身にもあるかもしれない。それこそ国政与党に辺野古埋め立て賛成の運動を盛り上げるように呼び掛けたい。我々もそれに負けずに運動をする。議論を活性化させることが何より大事だ」
 「実際の県民投票に当たって気になるのは設問だ。イエスかノーかのほかに、『分からない』といった選択肢は設けてほしくない。一人一人の県民がどういう気概と覚悟を持ち、子や孫の時代にどういう実績を残すのかを逃げ場を設けずに示してもらいたい。これは、ちょっと押し付けがましい問い掛けかもしれない。だけど、今を生きるウチナーンチュの一人としてやる責務があると思っている。県民がお互いにいがみ合い、分断された状況にこれで終止符を打ち、次の議論に進みたい」

普天間第二小に避難所 防衛局 ヘリ窓落下受け工事2018年7月24日

米軍普天間飛行場に隣接し、昨年12月に米軍ヘリの窓が落下した宜野湾市立普天間第二小学校で、沖縄防衛局は23日、落下物から児童を守るための屋根付きの避難所の設置工事を始めた。避難所設置は市教育委員会の計画に基づくもので、8月末までに運動場の2カ所に造る。ただ米軍機は事故後も学校の上空付近を日常的に飛行しており、保護者からは「米軍機が飛行する限り、根本的な問題解決にはならない」との声も上がっている。 後略

知事会、地位協定の改定要求へ 全会一致で初の提言2018年7月28日

全国知事会(会長・上田清司埼玉県知事)は27日、札幌市で開いた本年度の全国知事会議で、日米地位協定の抜本改定を含む「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で採択した。沖縄県の翁長雄志知事の要望を受け、全国知事会が約2年前に設けた「全国知事会米軍基地負担に関する研究会」の調査結果を踏まえた内容。全国知事会が日米地位協定の改定を提言するのは初めて。 

 全国知事会の提言は(1)米軍の低空飛行訓練ルートや訓練を行う時期の速やかな事前情報提供(2)日米地位を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として適用させること(3)事件・事故時の自治体職員による迅速で円滑な基地立ち入りの保障(4)騒音規制措置の実効性ある運用(5)米軍基地の整理・縮小・返還の促進―を求める内容。

 知事会議で沖縄県からは当初出席を予定していた翁長知事の代理で謝花喜一郎副知事が出席し、発言した。謝花氏は基地から派生する事件・事故や環境汚染の防止には日米地位協定の改定が必要だと強調した。米軍基地を抱える15都道府県で構成する渉外知事会の会長を務める黒岩祐治神奈川県知事も「米軍基地のない自治体も一緒になったもので、非常に意義深い。渉外知事会としても連携したい」と発言し、提言案は全会一致で採択された。

 知事会議の終了後、謝花氏は取材に「基地問題は日本全国の問題、主権の問題でもあると認識してもらうことが、基地負担の軽減にもつながる。基地がない自治体もある全国知事会で提言が採択され、基地問題が一歩でも前進できればありがたい」と話した。