琉球新報6月

2019年08月31日 16:37

許可なく護岸構造を変更 新基地工事、公有水面埋立法違反か

2019年6月7日

 

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、沖縄防衛局が新たに埋め立て用土砂の陸揚げに使用する予定のK8護岸で、県の許可なく当初の設計と異なる構造を加えている様子が6日、確認された。本紙記者が小型無人機で撮影した。土砂運搬船を接岸する場所とみられる。埋め立て承認を受けた際に伝えていた設計を変更する場合、県の承認が必要となるが、防衛局は設計変更を申請しておらず、県は行政指導を含めた対応を検討している。

 

 

 県は昨年8月に埋め立て承認を撤回しており、工事中止を求めている。防衛局は県の処分は無効だとして工事を続けているが、今回、小型無人機での取材で当初予定されていなかった構造を加えていることが明らかになった。
 護岸を土砂の陸揚げのための桟橋として使用する目的外使用に加え、無許可の設計変更に当たる可能性がある。その場合、仮に防衛局が主張するように2013年の埋め立て承認が復活していたとしても、県の承認を得ないまま設計を変更して工事していることになり、埋め立て承認の根拠法(公有水面埋立法)に違反することになる。
 防衛局が既に陸揚げに使っている別の護岸についても構造の変更は確認されていたが、県幹部は「(今回は)より明らかな変更だ」との見方を示した。
 防衛局は週明けの10日にもK8護岸を使って土砂を陸揚げする構えだ。一方、新基地建設に反対する土木技師の北上田毅氏は「陸揚げに使うにしては空間が狭い。現状で陸揚げを始めても作業の効率化にはつながらない。拡張も予定しているのではないか」と指摘した。

基地の話「封じ」は差別 生存権に関わる問題 <寄稿・追い出された経験から>野村浩也広島修道大教授

2019年6月14日 16:15

「基地の話はするな!」と広島市内の常連の居酒屋を実質的に追い出されたのは、5月13日のことだ。「朝鮮人・琉球人お断り」を彷彿(ほうふつ)とさせる明白な差別事件である。

 事件の経緯はこうだ。沖縄から広島旅行中の客3名(沖縄人1名、日本人2名)のうちの日本人1名が、まず、私に対して「沖縄大好きハラスメント」で絡んできた(差別1)。私は「そんなに沖縄が好きなら基地を引き取ってください」と対応した。

 さらに、沖縄人A氏が県民投票に行かなかったことを自慢気に話したので、私が反論すると、A氏は逆ギレして「基地の話はするな!」と炎上した(差別2)。「広島に来てまでどうして基地の話をされなければならないのか」と。その場を見た日本人店主(仮にB氏とする)は、私に絡んだA氏らをたしなめるのではなく、逆に私を「この店で基地の話はしないでください!けんかになりますから」と攻撃してきた。「私はけんかしてませんよ。どうして基地の話をしてはいけないんですか?」と尋ねると、「俺の店だからです」と答えた。

 「では、私に出て行けと言うのですか?」と尋ねると、店主は無言で肯定した。このままではA氏の炎上も収まらず、他の客にも迷惑だと思ったので、私は「お会計お願いします」と言わざるをえなかった。すると、店主B氏は、鬼の形相で速攻で伝票計算を終えて私に差し出した。こうして、絡んできた側のA氏らではなく、逆に私の方が実質的に店を追い出されることとなったのである(差別3)。

 これは、前代未聞の差別事件である。沖日合作の「朝鮮人・琉球人お断り」事件だからだ。

 まず、「沖縄大好きハラスメント」(差別1)について、初対面の他者に対して「東京大好き」とか「広島大好き」を連呼する日本人はほとんどいない。初対面の人に「あなたのことが大好きです」と言われたら、多くの人が気持ち悪く感じて当然だからだ。果たして沖縄人は、それを気持ち悪く感じる権利もないのだろうか。つまり、これは「ほめ殺し型」の差別なのだ。しかも、基地の押しつけという差別を行使している側の日本人がそれを言ったのだから、論理的には、「基地を押しつけておける沖縄が大好き」という意味になってしまうのである。

 日々、基地に命を脅かされている沖縄人は、最低限、基地の話をしないと命を守ることができない。これは、生存権にかかわる問題である。よって、「基地の話をするな!」とは、きわめて重大な人権侵害にほかならない(差別2)。たとえ自分の店であろうとも、人権侵害は許されない。基地の話をさせないことは、沖縄人の命を危険にさらす行為だからだ。こんなことでは、子どもたちを守ることができない。

 したがって、県民投票に行くことも、どちらに票を投ずるにせよ、子どもたちの命を守るための沖縄人の大人の最低限の責任だ。また、沖縄に帰国したくてもできない沖縄人はたくさんいる。さらに、県民投票に行きたくても行けない在日沖縄人もごまんといる。沖縄から遠く離れていようと、沖縄人は基地から逃れられないからだ。投票には、この人たちの分の価値もある。それなのに、この事実も知らず、投票にも行かなかったとなると、投票権のない沖縄人のことを最初から暴力的に切り捨てたに等しい。

 さて、基地の話は、必ずしもけんかに発展しない。けんかの原因は、他にもたくさんあるからだ。したがって、店主B氏は、「けんかをしないでください」とだけ言えばよかったのである。実際、私はけんかしなかった。にもかかわらず、基地の話だけを禁止したがゆえに差別に該当するのである(差別2)。

 翌日、私は再びB氏の店を訪れた。差別をやめさせるためだ。結果、B氏は、上記の説明を真剣に聴いてくれた。そして、私に深々と謝った。(差別2)(差別3)が解消した瞬間である。

 差別の多くは無意識的に行使される。逆にいうと、差別を自覚することは、差別をやめるために不可欠な第一歩である。そして、自らの差別を自覚できたがゆえに、日本人B氏は、沖縄人に対する対面的差別をやめることができた。今後、B氏の店で沖縄人が差別されることは一切ないだろう。それどころか、基地の話も大歓迎されるだろう。

 私は、B氏から希望をもらうことができた。日本人は、沖縄人に対する差別をやめることができる。そのまぎれもない証拠がB氏だからだ。したがって、日本人は、基地の押しつけという差別も確実にやめることができるだろう。沖縄人への差別をやめるために基地を引き取ることも確実にできるだろう。
 (広島修道大教授)

参列者「心に響かない」 沖縄全戦没者追悼式・首相あいさつ

2019年6月24日

沖縄全戦没者追悼式で玉城デニー知事はウチナーグチや英語を交えてあいさつし、辺野古新基地建設反対や日米地位協定の改定を訴えた。玉城知事の一言一言に会場からは拍手が沸き起こった。一方、安倍晋三首相はあいさつで沖縄の基地負担軽減や経済振興を推進する考えを強調したが、辺野古新基地建設に触れることはなかった。参列者から「帰れ」「ゆくさー(うそつき)」との声も上がり、知事あいさつへの受け止めとは温度差が際立った。 後略

涙雨ぬぐい祈る 世代超え戦没者悼む 沖縄・慰霊の日

2019年6月24日

おびただしい数の住民を巻き込んだ沖縄戦の組織的戦闘が終結して74年。「慰霊の日」の23日、県内各地で慰霊祭が行われ、人々は思い思いの形で戦没者を悼み、島々は鎮魂の祈りに包まれた。雨が降りしきる中、糸満市摩文仁の平和祈念公園内にある「平和の礎」には多くの戦争体験者や家族連れが足を運んだ。刻銘された戦没者の名をなぞったり、手を合わせたりして、戦争のない平和な沖縄を願った。

 時折強い雨が降り足元が悪い中、糸満市摩文仁の「平和の礎」には早朝から多くの遺族や関係者が訪れた。刻銘板に集う親子やきょうだいは一緒の傘に入るなど、雨は平和を願う人々の距離を近づけた。沖縄全戦没者追悼式では平和を願う玉城デニー知事の宣言や児童の詩に賛同する拍手や指笛が沸き起こる一方、新基地建設を進める安倍晋三首相のあいさつには怒号が飛び交った。
 娘と一緒に平和の礎を訪れた眞栄城嘉明さん(80)=浦添市=は父の嘉盛さんの刻銘板の前で泡盛をささげた。那覇署に勤めていた嘉盛さんは機関銃の部隊に配属され、伊江島で亡くなった。遺骨はなく、代わりに石ころを拾った。眞栄城さんは「よく那覇署に弁当を持って行った。剣道の特練員だった」と思い出す。娘の幸子さん(45)は嘉盛さんに会ったことはないが「生きていたらどんな人だったかな」と思いを巡らせた。
 妹を亡くした玉那覇香代子さん(85)=西原町=は「遺骨もないから毎年、平和の礎に来て慰霊している」と手を合わせた。幼稚園児にしまくとぅばを教える活動に取り組み、戦争の悲惨さも伝えているが、改憲論議や沖縄への自衛隊配備などに危機感を抱く。「沖縄がまた戦争の時のようにならないか不安ばかりだ」と子どもたちの将来を案じた。
 追悼式では、玉城デニー知事が平和を願う沖縄の思いを訴えた。集まった県民からは賛辞の拍手や指笛が沸き起こり、涙を浮かべて喜ぶ人もいた。大きな拍手を送った読谷村の男性(77)は「知事がウチナーンチュの肝心を大事にしていこうという意思がよく伝わってきた」とうなずいた。

自民、辺野古受注業者から献金 沖縄3議員支部、17年衆院選中 公職選挙法恐れ2019年6月26日

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、2017年10月の衆院選の選挙期間中、沖縄選挙区から出馬した自民党3議員の政党支部が、護岸新設工事などを受注している総合建設業の太名嘉組(浦添市)から計60万円の献金を受け取っていたことが25日、分かった。同社は15年から16年にかけて移設に伴う関連工事を複数受注している。公職選挙法199条では、国と契約した業者の国政選挙に関する寄付を禁止(特定の寄付の禁止)しており、これに抵触する可能性がある。3議員は14年の衆院選公示直前にも別の受注業者から献金を受け返金した。

 太名嘉組は25日現在、「担当者が不在だ」として本紙の取材に応じていない。3議員は西銘恒三郎氏(沖縄4区)、国場幸之助氏(比例九州)、宮崎政久氏(同)。3氏はいずれも取材に対して太名嘉組が移設工事に関する工事を受注していた事実を把握していなかったとした上で「誤解を招かないよう返金した」と回答した。3氏はいずれもメディアからの指摘で把握したという。

 県選挙管理委員会が公開する政党支部の政治資金収支報告書によると、太名嘉組は衆院選公示日直後の17年10月12、13日に沖縄3区支部を除く1、2、4区支部にそれぞれ20万円を寄付している。太名嘉組は県の格付け最上級の特A業者に指定されている。

 衆院選当時、移設工事に関わる護岸や仮設道路の工事3件を沖縄防衛局から受注していた。契約記録によると、請負額は他の業者と共同で受注した護岸工事が91億2700万円で工期は15年2月から19年3月末まで。残り2件は単独受注しており、工事内容は仮設道路工事で請負額は計13億円だった。

辺野古埋め立て用土砂の受注額、国算定と完全一致 見積もり前に価格決定 2019年6月25日

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設で、沖縄防衛局が埋め立て用土砂(岩ずり)を護岸用土砂の約3倍の価格で発注していた問題を巡り、防衛局が業者に見積もりを依頼する前に算定した価格と業者の受注価格が完全に一致していたことが24日、分かった。価格は1立方メートル当たり5370円。防衛局が見積もりのための価格調査を開始する、少なくとも1週間以上前には価格が設定されていた。高価な価格設定だけでなく、公共事業の手続きなどでも疑義が生じることとなった。 

 沖縄平和市民連絡会メンバーで土木技師の北上田毅氏が情報公開請求で入手した資料で判明した。

 沖縄防衛局は本紙の取材に「入札手続きを開始した17年11月時点では、当該岩ずりの単価は記載されていなかった。18年1月25日に特記仕様書を修正し、単価を追記した」と回答した。

 防衛省の内規では、材料単価の算定は原則3社以上から見積もりを集めることを定めている。辺野古埋め立て用の土砂を巡っては、防衛局から依頼を受けた調査会社が13社に見積もりを依頼したが、回答は1社だけで、その会社が受注した。

 沖縄大・沖縄国際大特別研究員の宮田裕氏は「公共事業は見積もり以前に価格が決まることはあり得ない」と指摘した。

悲劇、忘れない 児童集会、犠牲者悼む 宮森小米軍機墜落60年 2019年6月29日

 【うるま】うるま市石川(旧石川市)の住宅地や宮森小学校に米軍ジェット機が墜落し、児童ら18人が犠牲になった事故から30日で60年となるのを前に、児童会主催の追悼集会が28日、同校で開かれた。児童ら約450人が参加し、犠牲者に黙とうをささげた。児童代表が「平和の鐘」を鳴らし、慰霊碑「仲よし地蔵」に花や千羽鶴を手向けた。

 児童らは全員で平和の歌「ふくぎの木」を歌ったほか、6年生が平和を誓う群読も披露した。新垣桂校長は「当たり前だと思っていた日常が一瞬にして奪われた先輩たちがいたことを忘れてはならない」と述べた。6年生の朝(あさ)美心(みらく)さん(12)は「二度とこのような事故は起こってほしくない。いろんな人にしっかりと伝えていきたい」と語った。

 遺族会と石川・宮森630会主催の慰霊祭は30日午前、同校で催される。玉城デニー知事も出席する。