琉球新報4月、2019

2019年06月27日 07:25

沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消し 石井国交相、沖縄防衛局の審査請求受け裁決

2019年4月5日

名護市辺野古の新基地建設に伴う沖縄県の埋め立て承認撤回を巡り、石井啓一国土交通相は5日午前の会見で、撤回処分を不服として防衛省沖縄防衛局が求めた審査請求について、撤回を取り消す裁決を下したと発表した。
 石井大臣は、県が指摘した軟弱地盤の存在について所用の安定性を確保して工事が可能だと指摘。サンゴ類の保全についても環境監視等委員会の指導助言を受けており、配慮されていると判断した。

岩屋防衛相「今後も地元に丁寧に説明」 辺野古移設事業推進を表明 埋め立て承認撤回取り消し

2019年4月5日

【東京】名護市辺野古の新基地建設を巡り、岩屋毅防衛相は5日午前の会見で、防衛省沖縄防衛局の行政不服審査請求に関し国土交通相が沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消す裁決を下したことを受けて、辺野古移設事業を進める考えを改めて示した。
 「普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し沖縄の負担を一日も早く軽減するため、今後も取り組みを丁寧に説明し地元のご理解、ご協力を得られるよう粘り強く取り組んでいきたい」と述べた。

 審査請求では辺野古海域の軟弱地盤が存在することも論点になり、防衛省側の主張が認められる形となった。岩屋氏は「審査でお認めいただいたので、引き続き丁寧に説明しながら安定的に施工できるよう努力をしたい」と語った。軟弱地盤を改良するために今後必要になる県への計画変更申請については「できるだけ早く仕上げて出せるようにしたい」と説明した。

辺野古軟弱地盤、追加「調査」必要 国依頼鑑定書で指摘

2019年4月9日

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、石井啓一国土交通相が県による埋め立て承認の撤回を取り消した際、現在の施行計画で軟弱地盤の改良が可能だとする根拠として裁決書で引用した専門家の鑑定書に「より密度の高い調査の実施が有益だ」と、計画再検討の必要性に言及した記述があることが8日、分かった。裁決書ではこうした指摘について触れないまま、「地盤改良工事等を行うことにより所用の安定性を確保して工事を行うことが可能だ」とした結論部分のみを記載していた。

 鑑定書に基づけば、より密度の高い調査が実施されなければ詳細な設計に入ることはできないとみられるが、裁決書には追加調査の必要性についての記述はなかった。8日に鑑定書を確認した県関係者は「追加調査が必要だという専門家の指摘があるのに、裁決書では触れていない」と述べ、国にとって都合の悪い部分が意図的に伏せられているとの見方を示した。
 鑑定書を執筆したのは日下部治東京工業大名誉教授。国交省が県の埋め立て承認撤回を審理するために依頼し、3月14日に提出された。同22日に国交省の審理委員の意見が出され、石井国交相が撤回を取り消した。
 鑑定書には「引き続き詳細検討が行われ、断面の修正、地盤調査・土質試験の追加の可能性も含め、『必要があれば前段階に溯(さかのぼ)って再検討を行う』ことは想定されている」「詳細設計で要求される詳細調査では、必要に応じ、より密度の高い地盤調査や土質試験を実施するなどして、より精緻な解析を実施するのが有益と考えられる」など、より詳細な地盤調査が必要だとする日下部氏の見解も盛り込まれていた。

普天間停止、期限設定へ 3者協議を確認 負担軽減会議

2019年4月11日

【東京】政府と県、宜野湾市は10日、米軍普天間飛行場の負担軽減推進会議を首相官邸で開き、政府が県に約束した「5年以内の運用停止」の期限が2月で切れたことに関し、新たな期限設定に向け3者で協議することを確認した。一方、玉城デニー知事は名護市辺野古の新基地建設工事の中断を前提に、普天間の危険性除去について3~6カ月程度期間を区切って協議することに応じるよう求めた。これに政府側から具体的な返答はなく、政府と県、双方の溝が改めて浮き彫りになった。

 会議の開催は2016年7月以来、約2年9カ月ぶりで、玉城知事と松川正則宜野湾市長の当選後は初めてとなる。沖縄側からは玉城知事と松川市長が、政府側からは菅義偉官房長官と河野太郎外相、岩屋毅防衛相、宮腰光寛沖縄担当相が出席した。

 会議で松川市長は運用停止期限が2月で切れたことに「非常に残念だ」と伝えた上で、新たな期限の設定を求めた。これに対し杉田和博官房副長官は、その設定は必要だとの認識を示し「作業部会を開き、事務的に詰めていきたい」と話したという。一方、玉城知事が求めた普天間の危険性除去を話し合う場の設置に関し、政府側から返答はなかった。県民投票の結果を政府へ通知した際に玉城知事が提案した、日米に県を加えた3者による協議機関SACWO(サコワ)について菅長官は「両国政府で話し合いを進めている」と述べ、設置を拒否した。

 会談後、玉城知事は普天間の負担軽減について「次は実務者で協議できる。真摯(しんし)な協議が進められることに期待したい」と述べた。松川市長は「この日を新たなスタートとして、負担軽減にしっかり取り組んでいただきたい」と語った。

 会議は冒頭を除き非公開で行われた。

「辺野古終わらせる」 屋良氏が総決起大会

2019年4月11日

21日投開票の衆院沖縄3区補欠選挙に「オール沖縄」候補として立候補した新人でフリージャーナリストの屋良朝博氏(56)=無所属=は10日、沖縄市とうるま市で総決起大会を開いた。屋良氏は最大の争点である米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を終わらせ「これまでの沖縄振興策を変える」と訴え、必勝を誓った。

 屋良氏は「大人の責任として新基地を阻止する」と呼び掛け「県民一人一人が集まれば大きな力になる。難しい局面を乗り越えるパワーにしていこう」と呼び掛けた。今後の沖縄振興の在り方については「政府主導の振興策で沖縄は豊かになったのか。いま一度点検し、沖縄が沖縄らしく生きていける経済構造にしないといけない」と訴えた。大会には玉城デニー知事も出席し「争点は辺野古埋め立てに賛成か反対かだ。子や孫のために心をつなぎ、埋め立て反対の意思を示そう」と呼び掛けた。玉城知事のほか、平良昭一選対本部長、呉屋守将金秀グループ会長、東門美津子前沖縄市長らが参加した

屋良朝博氏が初当選 辺野古再び「ノー」 島尻氏に1万7728票差 衆院沖縄3区

2019年4月22日

玉城デニー氏の知事選出馬に伴う衆院沖縄3区補欠選挙は21日、投開票が行われ、「オール沖縄」陣営が推すフリージャーナリストで無所属新人の屋良朝博氏(56)が7万7156票を獲得し、初当選した。元沖縄北方担当相で新人の島尻安伊子氏(54)=自民公認、公明、維新推薦=は5万9428票を得たが及ばず、屋良氏は島尻氏に1万7728票差をつけた。3区の有権者が辺野古新基地建設に反対する屋良氏を選んだことで、県民は昨年9月の知事選、今年2月の県民投票に続き、辺野古埋め立てを強行する安倍政権に対し再び「ノー」を突き付けた。
 屋良氏は辺野古埋め立てを阻止し、基地機能の分散による普天間飛行場の即時閉鎖、返還を公約の柱に掲げたことで、新基地建設反対の県民世論を追い風に支持を広げた。翁長雄志前知事が構築した「オール沖縄」陣営の全面支援を受け、玉城知事の後継をアピールしたことで課題だった知名度不足を克服し、玉城知事の地盤でもある沖縄市やうるま市を中心に無党派層にも浸透した。
 衆院選初挑戦となった島尻氏は保守系の首長や県議、市町村議員、企業人らが運動を展開したが、辺野古容認の姿勢に対する反発もあり、序盤から苦戦した。沖縄担当相時代に子どもの貧困解消に向けた予算を確保したことや経済振興策などの実績、政府との信頼関係の強さを強調した。しかし閣僚時代の失言や普天間飛行場の県外移設から辺野古移設容認に転じたことに対する有権者の不信感を最後まで拭えなかった。

 投票率は2017年10月の前回衆院選の54・05%から10・06ポイント下がり、43・99%で、参院選を含む県内の国政選挙で過去最低を記録した。総選挙ではなかったことで有権者の関心が高まらなかったとみられる。
 当日有権者(在外含む)は31万3695人(男性15万4092人、女性15万9603人)だった。【琉球新報電子版】

沖縄県、係争委申し出 埋め立て承認撤回取り消し「国交相裁決は違法」 国、選挙結果無視し工事

2019年4月23日

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、玉城デニー沖縄県知事は22日、県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の決定を不服として総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)へ審査を申し出る文書を送付した。審査申出書で県は、辺野古移設を進める国の機関である国土交通省による裁決は中立ではなく違法だとして承認撤回を取り消した国交相の決定を取り消すよう勧告することを求めている。係争委は90日以内に判断を示す。県庁で会見した玉城知事は「国が私人になりすまして行政不服審査制度を用いて強制的に意向を押し通すことは地方自治、民主主義の破壊だ」と述べ、全国の地方公共団体にとって脅威だとの見方を示した。

 一方、21日に投開票された衆院沖縄3区補選では新基地建設に反対する屋良朝博氏が当選し、県内移設反対の民意が再び示されたにもかかわらず、投開票日翌日の22日も工事が強行された。

 県は係争委への審査申出書で(1)沖縄防衛局は一般私人と同様の立場でないため行政不服審査制度で撤回の審査を請求できず、国交相も不適法な審査請求に対し裁決できない(2)国交相は内閣の一員であり、防衛局の申し立てに対して判断できる立場でない―ことなどを挙げた。その上で国交相の取り消し決定は審査庁としての立場を著しく乱用した違法なものだと主張している。

 埋め立て承認の取り消しの決定を取り消させることで、撤回の適法性と有効性を認めさせ、埋め立て工事を再び止めたい考え。仮に係争委が棄却した場合、県は地方自治法に基づき高等裁判所に裁決の取り消しを求め提訴するとみられる。

 会見で玉城知事は「工事の長期化は避けられず普天間の早期の危険性除去は困難だ。軟弱地盤など県からの数々の指摘を一顧だにすることなく違法な工事をすることは看過できない」と強調。その上で係争委に対し「中立・公正な審査をお願いしたい」と述べた。
 申出書は71ページ。23日に国地方係争処理事務局に到達する見通し。
 また県は22日、国交相の埋め立て承認撤回の取り消しを受け、承認撤回の効力停止(執行停止)の取り消しを求める訴訟を取り下げた。国交相が5日に撤回そのものを取り消したため、仮処分である執行停止の状態が消滅したことへの対応。


本部港から土砂搬出再開 辺野古埋め立て 市民ら阻止行動

2019年4月26日

米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局は25日、本部港塩川地区(沖縄県本部町)からの埋め立て用の土砂の搬出を再開した。土砂を積んだ台船は塩川沖に停泊している。防衛局は27日からの大型連休中は工事を止めるが、5月以降は塩川地区からの搬出を本格化させ、工事の既成事実化を急ぐ構えだ。

 同地区は台風で岸壁が破損し使用できない状態だったが、修復工事が完了したため、本部町が業者に対し4月の使用を許可していた。
 本部港塩川地区には25日午前7時すぎ、警備員約100人が到着した。同8時35分、工事車両1台が土砂を台船に運び込んだ。新基地建設に反対する市民ら約30人が土砂を積んだ工事車両の前に立ちふさがるなどして抗議。午前中の搬出は車両1台にとどまった。工事車両の進路を空けるように通告していた沖縄防衛局職員らが市民の前に立ちはだかり、その周辺を沖縄県警機動隊が取り囲むようにして市民の抗議行動を制限した。同日は午後5時すぎまでに、車両計24台分の土砂が船に積み込まれた。
 本部町は現在、1カ月単位で岸壁使用許可を出している。本部港管理事務所によると5月も4月と同様、辺野古関連の15件を含む計46件の申請が業者から出ており、町は26日にも許可する見込み。
 本部港塩川地区から搬出された土砂は辺野古の新基地建設現場に搬入される予定。
 防衛局は25日、K8護岸の造成と埋め立て区域(2)―1、(2)への土砂投入作業を続けた。名護市安和の琉球セメント桟橋からの土砂搬出はなかった。

<社説>4・28「屈辱の日」 沖縄の切り捨て許されぬ

2019年4月28日

今から67年前の1952年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効した。日本が独立する一方で、沖縄、奄美、小笠原は切り離された。この「屈辱の日」を決して忘れてはならない。

 沖縄は去る大戦で本土防衛の時間稼ぎに利用され、日本で唯一、おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦が繰り広げられた。戦いは凄惨(せいさん)を極め、日米合わせて20万人余が犠牲になった。
 このうち9万4千人が一般人で、現地召集などを含めると12万2千人余の県出身者が亡くなった。民間人の死者が際だって多いことが沖縄戦の特徴である。
 激戦のさなか、日本軍はしばしば住民を避難壕から追い出したり、食糧を奪ったりした。スパイの嫌疑をかけられて殺された人もいる。
 戦後は米統治下に置かれ、大切な土地が強制的に接収された。米国は、講和条約の下で、軍事基地を自由に使用することができた。
 72年に日本に復帰したものの、多くの県民の願いを踏みにじる形で米軍基地は存在し続けた。沖縄戦で「捨て石」にされたうえ、日本から切り離された沖縄は、今に至るまで本土の安寧、本土の利益を守るために利用されてきたと言っていい。
 そのことを象徴するのが、名護市辺野古の海を埋め立てて進められている新基地の建設だ。2月24日の県民投票で「反対」票が有効投票の72・15%に達したが、政府は民意を黙殺した。
 反対の意思は、昨年9月の県知事選、今月の衆院3区補選を含め三たび明確に示されている。それらを平然と無視し続けるメンタリティーの根底にあるのは、「切り捨て」にほかならない。問答無用でとにかく「国の方針に従え」という姿勢だ。
 1879年の琉球併合(琉球処分)から140年になる。沖縄はいまだに従属の対象としか見なされていない。
 安倍政権は、普天間飛行場の危険性除去と返還のためには「辺野古移設が唯一の解決策」と判で押したように繰り返す。できない理由をあげつらう前に、どうすれば県内移設を伴わない普天間飛行場の返還が実現できるかを追求すべきである。
 国土の0・6%しかない沖縄に、全国の米軍専用施設(面積)の7割が集中している現状は誰の目から見ても異常だ。沖縄に対する構造的差別としか言いようがない。
 基地から派生する凶悪事件、米軍機の墜落といった重大事故が繰り返され、軍用機がまき散らす騒音は我慢の限度を超える。有事の際に攻撃目標になるのが基地だ。この上、新たな米軍基地を造るなど到底、受け入れ難い。そう考えるのは当然ではないか。
 これまで繰り返し指摘してきた通り、県民が切望するのは平和な沖縄だ。政府はいいかげん、「切り捨て」の発想から脱却してほしい。