琉球新報3月、2019

2019年04月14日 18:12
辺野古のサンゴ、ワイヤが損傷 埋め立て海域のオイルフェンスに連結
2019年3月1日
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う新基地建設工事が進む名護市辺野古崎と長島の中間点にある水深5メートルのところで、サンゴが損傷していることが28日、分かった。
 損傷したサンゴは横幅90センチ・縦60センチの大きさで岩に張り付いた被覆状の「ハマサンゴの仲間」。2本の茶色いワイヤがサンゴの上を十字に横切って伸び、表面の一部が削り取られた状態で見つかった。
 潜水調査をしたダイビングチーム・レインボーの牧志治代表(68)は「ワイヤがあるうちはサンゴの成長は望めない」と指摘した。
 制限水域の海面に浮くオイルフェンスにつながれているワイヤは、波で揺られて海底をさらい、岩に付着したサンゴの稚貝や海草などを削り取っている。
岩屋防衛相発言 沖縄人を全否定する差別 識者評論 広島修道大 野村教授
2019年3月8日

「『シカト』といういじめ方が残酷なのは、そこにいる人間を存在しない人間のように扱うことで、『おまえはもう死んでいる』と無言のうちに告知しているからです。『殺してやる』というのなら、まだこっちは生きているわけですから、対処のしようもありますけれど、『死んでいる』と言われてしまうと、もう手も足も出ません」(『先生はえらい』内田樹著、筑摩書房、2005年、115ページ)。
 岩屋毅防衛大臣のことだ。

 大臣の発言は、もはや、暴力だ。沖縄人が傷つくのも当然だ。傷つくのは、人間として極めて正常な反応だ。暴力に傷つかない人間はいないからだ。
 岩屋大臣は、県民投票の結果をあらかじめ無視すると決めていた。沖縄人の民主主義に対して、「おまえはもう死んでいる」とあらかじめ死亡宣告していたのだ。
 沖縄人の民主主義の存在を全否定する今回の発言は、前回の「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」という発言と整合している。両者をまとめて翻訳すると、「国の民主主義は、沖縄の民主主義を含まない。なぜなら、存在しないからだ」と言っているのだ。
 沖縄人の民主主義を全否定できるのは、あらかじめ沖縄人の存在を否定しているからだ。ただし、岩屋防衛大臣は、安倍晋三総理大臣をはじめとする政府の「沖縄人は国民ではない」という非公式見解を代弁したにすぎない。あるいは、無意識的見解といってもよいだろう。
 その証拠は政府の行為にある。3度の知事選で辺野古埋め立てに反対しても、埋め立てを強行しているのがそれだ。国民としての存在を認めていれば、絶対にできない行為だ。実際、他の都道府県に対しては絶対にしない。
 なぜか。国民としての存在を認めているからだ。沖縄人をそもそも国民として認めていない以上、政府にとって、県民投票の結果をあらかじめ無視すると決めるのはあまりにも当然すぎることなのだ。
 あまりにも当然すぎるのは、無意識的に沖縄人の国民としての存在を認めていないからだ。あるいは、沖縄人を国民として認めないことがあまりにも当然すぎて意識することもないといってもよいだろう。
 国民としての存在を認めないこと。これを差別という。ただし、それは無意識的である。差別のほとんどは無意識的になされる。そして、無意識だからこそ、より悪質で深刻なのだ。無意識的になされる以上、差別者は、自身の行為を差別とは意識しない。したがって、差別者が自ら差別をやめる可能性もないに等しい。だからこそ、他者が差別を指摘して意識させなければならないのである。
 差別を言葉で表現すること。これを差別発言という。岩屋大臣の発言は、典型的な差別発言である。ただし、無意識的に発言しているので、ご本人は決して差別とは思っていない。
 差別発言が問題なのは、発言という行為自体が暴力へと転化することがあるからだ。差別発言は、行為遂行的に差別を正当化する。差別が正当化されると、差別の終わりがみえなくなる。だから、差別される側が傷つくのだ。このとき、差別発言はまぎれもない暴力として機能している。差別発言とは、それ自体が差別行為なのだ。
 差別行為は、差別発言に限らない。他に対してはやらないか、できないことを行うことも差別行為である。その典型が、米軍基地の押しつけであり、辺野古の埋め立てであり、県民投票結果の無視である。これらは、全て暴力である。
 より正確には、差別的暴力である。実際に沖縄人に多大な被害をもたらし、沖縄人の心を深く傷つけているからだ。ところが、このような行為は、他の都道府県に対しては絶対にやらないし、できない。無意識的に、国民としての存在を認めているからだ。
 このように、沖縄人の国民としての存在を認めない差別は、すでに、大きな暴力へと発展している。社会学的には、差別が制度化されているといっても過言ではない。多数者の少数者への差別の制度化。これを植民地主義という。
 そして、この植民地主義体制を無意識的に支えている張本人こそ、一人一人の日本人にほかならない。一人一人の日本人が、無意識的に、沖縄人を同じ国民として扱っていないからだ。一人一人の日本人が、無意識的に、沖縄人を差別しているからだ。
 70%もの在日米軍基地を押しつけている事実を意識せず、基地の引き取りすら主張しない日本人が圧倒的多数であることが何よりの証拠だ。この日本人の無意識を意識へと転換させるために、県民投票は実施されたのだといっても過言ではない。
 日本人よ、基地を引き取って植民地主義と訣別しよう! 内田樹さん、あなたもだ!
新基地工期 最短13年 軟弱地盤、問題次々 膨らむ工費/沈下恐れも
2019年3月10日
名護市辺野古の新基地建設を巡って、軟弱地盤の問題による工事の長期化を示す事実が次々と明らかになっている。政府は地盤改良だけで工期を約5年と見込むが、そのために必要な県への計画変更申請も認められる見通しは立っていない。工期と同様に工費が膨らむことも避けられない情勢で、政府が辺野古移設を進める理由に掲げる「普天間飛行場の一日も早い返還と危険性除去」という大義名分は崩れている。

 
 政府の当初予定では、埋め立て5年、その後の施設整備3年の計8年の工程が計画されていた。だが、軟弱地盤の対応が発生したことで、単純計算すると13年以上の工期がかかることになる。県が独自の試算で示した「13年」に符合する。
 
 ■計画変更
 防衛省の報告書で示された工程表によると、地盤改良工事は大きく分けて二つの段階がある。海上から大型作業船を使って地盤を固めるための砂杭(ぐい)6万3155本を打ち込む工事には約3年8カ月を見込む。それに加え、改良が必要な場所は大型船で対応できない浅瀬部分にも広がり、いったん埋め立てた後に砂杭1万3544本を打ち込む作業が計画される。この過程には約1年かかる。足し合わせると約5年になる。
 報告書では浅瀬部分について「海上工事に連続して施工する工程としている」と記載し、二つの改良工事は同時並行での実施を見込んでいない。
 これらの地盤改良は、政府が今後工事の計画変更を県に申請し、承認されてからが起点となる。2月の県民投票で辺野古新基地に「反対」の民意が改めて示され、防衛省内は「変更申請に対して知事がはんこを押すことはできないだろう」と見る。地盤改良に着手できなければその分、工期も遅れる。

 ■7・7万本
 軟弱地盤に約7万7千本の砂杭を打ち込む辺野古の改良工事に関して、防衛省の報告書には東京国際空港(羽田空港)との比較表が載っている。開会中の国会審議でも、防衛省は過去の軟弱地盤工事で羽田空港が約25万本、関西空港は1期目が約103万本、2期目が約120万本の杭がそれぞれ使われる規模だったとして、辺野古の本数の"少なさ"を強調し工事が可能だと説明している。
 だが、地盤工学が専門の鎌尾彰司日本大学准教授は「羽田空港とは埋め立て面積の規模が異なり、杭の本数が違うのは当然だ。本数よりも深さが問題で、深くなるほど工事の難度が高くなる」と語る。
 辺野古の軟弱地盤は最大で水面下90メートルの地点に達しているが、防衛省は改良が必要なのは水面下70メートルまでで、その下の地盤は「より固い粘土層」ゆえ工事は不要との立場を示している。
 ただ、関西空港の例では軟弱地盤が改良地点よりも深い場所に及び、現在でも年に10センチずつ沈下しており定期的に補修が施され莫大(ばくだい)な費用がかかっている。辺野古についても防衛省は完成後の地盤沈下の対策を検討しており、追加的な補修により経費がかかる可能性がある。
 鎌尾教授は「長期にわたる地盤沈下の見通しを立て、適切な対応を取らなければ安全な構造物ではなくなる」と危険性を指摘した。(明真南斗、嶋岡すみれ)
県民投票結果の尊重訴える 那覇で1万人大会、辺野古新基地の断念要求
2019年3月17日
「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が主催する「土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める3・16県民大会」が16日、沖縄県那覇市の那覇新都心公園で開かれた。県民投票で示された名護市辺野古埋め立て反対の結果の尊重を求めて、主催者発表で1万人が参加した。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う新基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局が25日にも新たな埋め立て区域への土砂投入を始めようとするのを前に、工事の即時中止などを求める大会決議を採択した。玉城デニー知事は「県民投票の民意を何よりも尊重し、日米両政府が辺野古新基地建設を断念するまで揺らぐことなく闘い続ける」とメッセージを送った。
 大会決議は、2月24日の県民投票で辺野古埋め立て反対が投票総数の7割を超えたことを踏まえ「県民投票で示された圧倒的な沖縄県民の民意を尊重し、埋め立て工事を中止し辺野古への新基地建設を即時、断念せよ」と訴えた。辺野古新基地建設の断念と埋め立て土砂の撤去、オスプレイ配備の撤回と米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去を日米両政府に求めた。
 19日にオール沖縄会議共同代表の稲嶺進氏と高里鈴代氏、ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩氏が大会決議を携えて上京し、国政野党の県選出国会議員らと共に政府への要請行動を展開する。
 昨年12月に辺野古沿岸への土砂投入に踏み切った沖縄防衛局は、県民投票後も工事を続行し、今月25日にも新たな埋め立て区域に土砂投入を開始すると県に通告している。大会では参加者全員で「土砂投入をやめろ」「民意は示された」のメッセージボードを掲げ、抗議の声を上げた。
 玉城知事は下地島空港ターミナル完成式典に参加するため宮古島市に出張しており、謝花喜一郎副知事があいさつ文を代読した。あいさつでは「民主主義国家であるわが国において直接示された民意は何より重く、また尊重されなければならない」と県民投票の意義を強調し、安倍晋三首相や岩屋毅防衛相らが県民投票にかかわらず埋め立て工事を続けるとの発言を続ける政府の姿勢を批判した。
 さらに「建設予定地に存在する軟弱地盤は、広大な面積に深く存在する。政府が辺野古移設に固執することによって普天間の危険性が放置されることは決して許されるものではない」と指摘し、埋め立て工事を中止した上で、県との対話により解決に取り組むよう政府に求めていくとした。
安和の桟橋前で1週間集中抗議開始 市民ら30人「違法工事に加担するな」 名護市辺野古の新基地建設
2019年3月18日
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を阻止しようと、市民らは18日午前から埋め立て用土砂の搬出拠点となっている名護市安和の琉球セメントの桟橋で1週間の集中抗議行動を始めた。

 18日午前11時現在、工事車両の出入り口には約30人の市民が結集した。
 「もう基地はいらない」「違法工事に加担するな」などと書かれたプラカードや横断幕を手に、工事の即時中止を訴えた。
 桟橋に続く琉球セメントの入り口前では市民らがシュプレヒコールを上げる傍ら、警備員が工事車両が円滑に出入りできるよう誘導していた。
 土砂を積み込んだ工事車両が一台ずつ、ゆっくりと警備員の誘導に沿って入り口を通り抜けると、市民らはその度に「これ以上、沖縄の自然を壊さないで」「戦争につながる基地はいらない」と訴えた。
 市民の存在をあえて確認しないように、ただひたすら前を見て運転する者、申し訳なさそうに会釈する者、市民を見下ろし頭の横で人さし指をくるくる回すジェスチャーを見せる者-。
 高さ3メートルの工事車両から見える沖縄の景色はどのように映っているのか。運転手の表情は千差万別だった。
辺野古新区域 きょう土砂 菅氏、移設「進める」
2019年3月25日
米軍普天間飛行場の移設に伴い国が名護市辺野古で進めている新基地建設で、沖縄防衛局は25日にも新たな埋め立て区域への土砂投入を始める。玉城デニー知事は埋め立て反対が7割を超えた県民投票結果などを踏まえ、新たな土砂投入を含めた埋め立て工事を中止するよう安倍晋三首相に求めたが、政府は既定方針通り土砂投入することを県に伝えている。24日に日帰りで来県した菅義偉官房長官は記者団に「地元の理解を得て辺野古移設を進めていく考えに変わりはない」と政府の方針を強調した。
 一方で埋め立て区域内に存在する軟弱地盤に対応するために大幅な設計の変更が必要になることを政府自身が認めており、完成までの工期や事業費のめどが示されないなど、新基地建設工事の実現性について国会でも追及が強まっている。
 沖縄防衛局は昨年12月に、シュワブ内にある辺野古崎南西側の沿岸部約6・3ヘクタールへ埋め立て土砂の投入を始めた。また、県赤土等流出防止条例に基づいて1月に防衛局が県に提出した通知によると、現在土砂を投入している区域に隣接した約33ヘクタールの区域を埋め立てる新たな工事に今月25日から着手するとしている。
 これに対し16日に那覇新都心公園で開かれた「辺野古新基地建設断念を求める3・16県民大会」に主催者発表で1万人が集まるなど、県民投票の結果が出た後も埋め立てを続ける政府の姿勢に反発の動きがある。新基地建設に反対する市民は、25日朝から辺野古の海上や米軍キャンプ・シュワブゲート前で通常より規模を拡大した抗議行動への参加を呼び掛けており、東京都内でも連帯した集会が予定されている。
早朝ゲートに響く「工事やめろ」 政府新たな区域に土砂投入へ 市民ら名護市辺野古のゲート前で怒りの抗議行動
2019年3月25日 
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、政府が新たな埋め立て区域に土砂を投入する予定の25日午前、建設に反対する市民らは米軍キャンプ・シュワブのゲート前で抗議している。
 市民らは午前5時から抗議を始め、午前6時45分現在約30人が集まっている。「県民投票で新基地反対の民意は示された。工事をやめろ」と声を上げた。
 市民によると、抗議中の女性一人が拘束された。
「県民投票尊重を」 沖縄県議会、賛成多数で意見書可決
2019年3月28日
沖縄県議会2月定例会は27日の最終本会議で、名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て反対が7割を超えた2月の県民投票の結果を尊重し、埋め立て工事を「直ちに中止」して新たな米軍基地建設を断念するよう求めた意見書と決議を与党3会派(26人)による賛成多数で可決した。野党沖縄・自民党(14人)は反対し、中立会派の公明党(4人)、維新の会(2人)は退席した。与党は全会一致での可決を目指したが実現しなかった。
 意見書では「県民投票は辺野古の埋め立てに反対する揺るぎない民意を示したもので、民意を否定することは許されない」として、工事を強行する政府に対し「結果を尊重し、従うことは民主主義国家として当然の姿だ」と指摘している。

 意見書、決議の宛先は首相、米大統領、国連事務総長、国連人権理事会議長、全国知事会会長。