琉球新報12月

2020年01月04日 17:18

「目的外使用」に怒り 区民、続く渋滞に反発も 安和桟橋搬出開始から1年  辺野古新基地建設

2019年12月3日

【名護】沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、市安和の琉球セメント桟橋から埋め立て用土砂の海上搬出が始まり3日で1年。本部半島の鉱山などから採取した土砂が船に積み替えられ、辺野古の海に連日送られている。安和区民らは地域が基地建設に利用されていることへの怒りや目的外使用への批判を訴える一方、交通渋滞への反発など、複雑な心境で見つめる。

 

 安和桟橋や本部港塩川地区で作業の監視を続ける本部町島ぐるみ会議によると、昨年12月から今年10月までに安和桟橋から運搬船415隻、塩川地区から47隻分の土砂が搬出された。阿波根美奈子事務局長は「行政に(基地建設阻止の)有効な手段を講じてほしい」と話す。

 

 桟橋前の交差点では土砂を積んだ大型車が40台以上並ぶ日もある。10月、県警は「交通量と事故の増加」を理由に、桟橋付近の国道449号に転回禁止標識を7カ所設置した。県警は抗議行動とは「無関係」としている。

 

 安和に暮らす70代男性は「(抗議で)渋滞が起こり大変だ」と憤る。区内では抗議活動参加者の駐車が迷惑だという声もあるという。安和区の幸地隆作区長は「(桟橋使用に)反対するにしても、区に迷惑のない方法でやってほしい」と語る。

 

 一方、区民の長山豊樹さん(35)=団体職員=は「辺野古の基地建設に、安和が関わることになるとは夢にも思わなかった」とし、新基地建設に反対する立場から「区にある桟橋が目的外使用され、赤土が流出している。住民の生活を守ってほしい」と述べた。

 

雨に負けず阻止訴え 県民大行動 辺野古で750人

2019年12月8日

【辺野古問題取材班】名護市辺野古の新基地建設を巡り7日、米軍キャンプ・シュワブのゲート前で「県民大行動」が開かれた。北風が吹き、冷たい雨が降る中、県民をはじめ全国から約750人が集まり基地建設阻止を訴えた。

 太平洋戦争が開戦した12月8日に合わせ、毎年沖縄を訪れる「オキナワ平和の旅」(主催・自治労)の一行約150人も集会に参加。初めて来県した横浜市の町中純子さん(44)は「街の真ん中にある普天間飛行場を見て驚いた。沖縄県民は苦悩と葛藤の中で生活を余儀なくされていることを知った。横浜に帰ったら沖縄の現状を伝えたい」と話した。「第3回障がい者辺野古のつどい」も開かれ、参加者らは時折、白い息を吐きながら「なかなか健常者と同じように辺野古には来られないが、基地建設反対の気持ちは同じ」などと平和への思いを訴えた。

 渡嘉敷綏秀実行委員長(68)は「障がい者を極めて厳しい状況下に置く戦争は人の命を奪うだけでなく、多くの障がい者を生み出す。戦争につながる辺野古の基地建設を日米両政府が諦めるまで集会を開催していく」と声を上げた。

辺野古 土砂投入1% 開始1年も工事大幅遅れ

2019年12月14日

米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、政府が埋め立て予定区域への土砂投入を開始して14日で1年となった。政府は、2月の県民投票や4月の衆院沖縄3区補欠選挙で示された「反対」の民意を尊重せず埋め立てを進めているが、埋め立て工事の進捗(しんちょく)率は県の推計によると事業全体に必要な土砂投入量の約1%にとどまり、当初計画より大幅に遅れている。

 沖縄防衛局の埋立承認願書によると、現在、土砂投入が続く辺野古崎付近海域の埋め立て工事は約6カ月で完了すると示されている。だが、沖縄防衛局によると1年が経過した段階でも同区域への土砂投入は7割にとどまる。また今年3月に土砂投入が開始された辺野古漁港側の区域への土砂投入は全体の1割程度で、ほとんど進んでいない。

 米軍キャンプ・シュワブのゲート前で座り込み活動を続けている県統一連の瀬長和男事務局長(56)は「辺野古や安和、海上で市民が粘り強く抗議している間に、政府が隠してきた軟弱地盤や高さ制限の問題などが明るみになってきた。辺野古新基地建設はやめるべきだという世論が国内外に広がってほしい」と語った。

石垣市議会、最終本会議始まる 市自治基本条例の廃止条例案採択へ 開会前、市民が白紙撤回求める

2019年12月16日

沖縄県の石垣市議会12月定例会最終本会議が16日午前10時から始まった。市議会与党の自民会派議員が提案する市自治基本条例の廃止条例案が審議され、採決される。自治基本条例は「自治体の憲法」といわれ、住民投票や市民参画などを定めている。賛成者が過半数に達した場合、全国で初めて自治基本条例が廃止されることになる。

 最終本会議を前に、石垣市役所前には同日午前9時過ぎから議案に反対する市民ら約30人が集まり、「廃止は許さない」と反対の声を上げた。集会に参加した女性は「数の力で結論を出すべきではない。議員は市民のことを考えて行動してほしい」と語り、議案の白紙撤回を求めた。

 石垣市議会は与党が多数を占めるが、条例廃止に市民の反発も強まっていることなどから自民会派ではない与党議員の対応は流動的であり、採決の行方は不透明となっている。

 

自治条例廃止案を否決 石垣市議会 賛成少数、与党の公明などが反対に回る

2019年12月16日

石垣市自治基本条例を廃止するための条例案が16日の市議会(平良秀之議長、定数22)12月定例会最終本会議で採決され、10対11の賛成少数で否決された。賛成が過半数に達した場合、全国で初めての自治基本条例の廃止となる異例の事態だったが、野党に加えて、公明会派の1人、与党系会派「未来」の1人が反対に回った。条例案は石垣市議会与党の自民会派議員らが提案していた。
  
  市自治基本条例は2010年4月に県内で初めて施行された。まちづくりにおける市民や市当局、市議会の役割やまちづくりの在り方などを定めている。条例は、住民投票についても規定しており、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票実施を求めて「市住民投票を求める会」が2018年12月に直接請求した際に、実施の根拠としていた。住民投票を巡っては現在、「求める会」が市を提訴しており、19日に第1回口頭弁論が行われた。
  
  今年3月に市議会に設置された、与党議員のみで構成する同条例に関する調査特別委員会は11月下旬の5回目の委員会で、「廃止すべき(条例)」と結論付けていた。野党は廃止理由の説明が不十分などとして反発したが、自民会派議員らは廃止条例案の提案を強行した。廃止条例案については、市民から反発の声が強まっていた。

石垣市自治基本条例廃止提案 市議会が否決 賛成10、反対11

2019年12月17日

【石垣】石垣市議会与党の自民会派議員らが提案した市自治基本条例の廃止条例案について市議会(平良秀之議長)は16日の市議会12月定例会最終本会議で採決を行い、賛成10人、反対11人の賛成少数で否決した。賛成が過半数だった場合、全国で初めて自治基本条例を廃止する異例の事態だったが、鍵を握った与党内の非自民系議員の賛同を得ることができなかった。ただ、自民会派は来年3月定例会にも現行条例に代わる新たな条例案を提案する構えだ。

 採決では廃止条例提案・賛成者の自民会派議員ら9人に加え、与党の非自民系会派「未来」の1人が賛成した。野党の9人と与党の公明1人、未来1人が反対した。採決の鍵を握っていた与党の非自民系議員3人のうち、2人が反対した。

 16日の本会議では廃止条例案の採決を前に、野党議員の質疑に対する提案者の石垣亨氏の回答を巡って紛糾した。賛成討論に与党4人が立ち、廃止理由の正当性を強調。反対討論した野党7人は自治基本条例の意義を訴えた。傍聴席には多くの市民が詰め掛けた。

 議会閉会後、中山義隆市長は廃止条例案否決について「本議会における採決結果を尊重したい」と文書でコメントした。

 「自由民主石垣」会派長の砥板芳行氏は取材に対し「準備不足で否決されたが、問題点を放置するわけにはいかない。(来年)3月定例会で今の条例に代わる条例案を提案したい。公明や未来にも理解を得て進めたい」と述べた。

 新たな条例案については、現行条例を基にした上で条例上の「市民」の対象を限定するほか、住民投票の請求に対して議会議決の必要性を明記したり、県や国の政策に関する事項を実施対象から除外したりする方針を示した。新たに性的マイノリティーの観点なども盛り込みたいとした。

 自治基本条例を巡っては、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の請求団体が、条例の規定を投票実施の根拠にしていることから注目が集まった。

 与党議員のみで構成される同条例に関する調査特別委員会が11月下旬に廃止すべきだと結論付けた。野党は廃止理由の説明が不十分などとして反発したが、自民会派議員らは廃止条例を提案した。この提案については、市民からも反発の声が強まっていた。

<社説>自治条例廃止を否決 自治の推進を貫くべきだ

2019年12月17日

「自治体の憲法」とも呼ばれる条例を全国で初めて廃止に追い込む結論は避けられた。だが民主主義や地方自治を追求する観点から、ここまでの経緯を検証し教訓にすべきだ。

 石垣市議会は、与党側が提案した市自治基本条例廃止の提案を賛成10人、反対11人の賛成少数で否決した。
 与党の一部が反対に回った。段階的な見直しを経ない廃止や、新たな条例提案のめどが立っていないことが理由だ。野党だけでなく与党内からも批判があるほど、廃止ありきのむちゃな提案だった。
 提案した自民会派の議員らは「社会情勢の変化や、二元代表制の円滑な運用には必ずしも有用な条例ではない」と理由を説明した。市政運営への市民参加などを柱にする自治基本条例を全否定するのは、市民を置き去りにしたおごりに映る。
 自治基本条例は2010年に県内で初めて石垣市で施行された。市政運営の最高規範と位置付けられている。条例が掲げている情報共有、市民参加、協働、多様性尊重などの方向性が間違っているとでも言うのか。
 条例の見直しに際し「(市は)審議会を設置し、諮問しなければならない」と規定されている。今回、そのような手続きは経ていない。
 提案者は「主語は『市』だ。市議会は当たらない」としているが、条例の逐条解説は「市」について「議会を含めた基礎的な自治体を意味する」として市議会を含むとの見解を示している。
 見直しでさえ審議会への諮問が必要なのだから、廃止する場合はさらに慎重な議論が必要だ。
 市の担当課は市議会で、市当局が条例廃止を検討する場合について「庁内の議論と合わせて、審議会における議論、市民参画などを経て廃止が必要だとの結論となった場合に、廃止条例を議会に提出することになる」と説明した。
 今回の廃止案は、3月に市議会に設置された市自治基本条例に関する調査特別委員会がわずか5回の審議で決めた。市民の声を聞いて1年以上かけて策定した経緯からすると、あまりにも乱暴な手続きだ。
 背景には、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画を巡る住民投票が、この条例を根拠に直接請求されたことがあるとみられている。条例には、有権者の4分の1以上の連署で市長に住民投票を義務付ける文言がある。
 石垣市住民投票を求める会は、住民投票条例が市議会で否決されたため、市を相手に訴訟を起こした。廃止の提案に、住民投票実施のハードルを上げる狙いがあるとすれば、民主主義を後退させる重大な問題だ。
 市議会は今回の提案に至った過程を検証し、市民不在を改め、市民参画型の自治を推進する姿勢を貫くべきだ。全国が注目している。