琉球新報10月

2019年01月14日 10:24

城デニー陣営で創価学会の三色旗を振った男性、孫思う自民党支持者の思い 沖縄県知事選

2018年10月3日

投開票日の9月30日午後9時半すぎ、玉城デニーさん当選確実の報道を受け、歓喜に包まれる沖縄県那覇市の会館で、創価学会を象徴する青、黄、赤色の三色旗が揺れた。「ウチナーンチュのチムグクルが辺野古新基地建設反対の意思を再び示した」。野原善正さん(58)は、体いっぱいで喜びを表すかのように、旗を大きく振り続けた。

 

価学会の三色旗を持って玉城デニーさんと肩を組む野原善正さん(左から2人目)=9月28日、那覇市

 

「学会員が集票マシンに...」 危機感

 学会が支持する公明党は今回、辺野古新基地建設問題の賛否を明言せずに政府の支援を受ける佐喜真淳さんを推薦した。「学会員が集票マシンとして使われる。ウチナーンチュの魂を見せなければ」。危機感に駆り立てられた。

 約15年前、布教を巡って組織と対立したことがあった。反逆者と言われ、職も失った。「本当につらかった。今回も正直、怖かった」と振り返る。今回、親戚からも運動をやめるよう諭されたが、告示日から10回、玉城さんの演説場所で三色旗を振った。同志に深く考えてほしかった。

 野原さんは創価学会の池田大作名誉会長の文章をよりどころとした。沖縄に思いをはせた池田名誉会長は著書の中で「人類史の悲劇がこの小さな島に集約された。ゆえに人類史の転換をこの島から起こすのだ」とつづった。転換とは新基地建設阻止のことだと思った。同志にも物事の本質を深く考えてほしかった。「正しいことをやって叱られるのが法華経の行者だ」。教えが支えになった。

 結果を受けても気は休まらない。「国はまた沖縄を締め付けるだろう。玉城さんは屈せず、最後まで翁長雄志知事の遺志を継いでほしい」と期待を込めた。


 

池田大作創価学会名誉会長の書いた小冊子「沖縄『世界平和の碑』」の中にある一節

 

「信仰心を疑われるのも怖かった」

 県出身で東京都在住の住友(旧姓・国吉)ヒサ子さん(66)は「このままでは古里の自然が壊されてしまう」といても立ってもいられず沖縄に来た。「白い目で見られたりするのも信仰心を疑われるのも怖かった」と語る。だが、青く澄んだ辺野古の海が埋め立てられるのが許せず、玉城さんの陣営で運動し、県内の学会員を説得して回った。

 住友さんは、公明党が集団的自衛権の行使容認の閣議決定に賛同したころから党の方針に違和感を抱いていたが、思いは公にしてこなかった。だが、池田名誉会長は「人間革命」の中でも沖縄に心を寄せ、核廃絶を含め平和を訴えていた。「現在の公明党にはこの平和思想に反する。真実を見抜いて投票してほしい」と街頭でも同志に訴えた。

 石垣市出身の安里善好さん(82)=浦添市=は学会に加入して59年。8歳の時、沖縄戦では、マラリアで両親を亡くした。自身も発病したが九死に一生を得た。「基地建設は戦争につながる。目をつぶってはいけない」と語気を強める。

 40年間基地で働いたが、「基地建設による経済効果は土台がなく、いつか崩れる」と断じる。日本の安全保障を理由に基地建設の正当性を主張する人もいるが、「本土が沖縄に押し付けたいだけ」に映る。沖縄戦からの差別の歴史が続くことに我慢ができず、党の方針に従わなかった。「国は県に寄り添わず、新知事が苦しい思いをするだろう。でも、県民がついている」と力を込めた。

「孫が大きくなった時に沖縄はどうなっているのか」

 従来と違う投票行動をしたのは公明党支持層だけではない。これまで自民党の推薦する候補者に投票し続けてきた新垣政栄さん(77)=浦添市=は、この数年で「孫が大きくなった時に沖縄がどうなっているのか」と考え始めた。

 70歳近くになるまで建設業界で働き、自民系候補に投票しないと公共工事が受注できなくなると思い、遊説や集会にも足を運んでいた。だが、9人の孫を抱くうちに気持ちが変わった。

 安倍政権が強硬に基地建設を進めるやり方にも怒りを覚えた。今回の選挙は人生で初めて自民党推薦でない候補に票を投じた。

 本紙と共同通信の出口調査によると今知事選で、自民党支持層の24%、公明党支持層の27%が玉城さんに投票した。共通するのは「辺野古に新基地を造らせてはいけない」とウチナーンチュの尊厳を大切にする気持ちだった。
('18知事選取材班)

沖縄県知事当選の玉城デニーさんに殺害予告複数 SNS、批判受け削除も

2018年10月3日

9月30日の沖縄県知事選挙で新たな知事に選ばれた玉城デニーさん(58)に対する殺害予告や脅迫、誹謗(ひぼう)中傷が、2日までにSNS上に複数書き込まれている。ある発信者は短文投稿サイトのツイッターに「戦後日本を守ってきたのは米軍基地と核」だと断言した上で、それを否定する玉城さんを「もう殺すしかない」「こいつを殺さなければ、沖縄県民の尊い命が失われる」と記した。

 ツイッターでは他にも「デニーの暗殺・暗殺。それが一番良い。」や、「何万人死のうが関係ありません。日本中央政府は武力を持って沖縄地方の『再占領』です。この再占領計画で亡くなった人達は『玉城デニー』とデニーを選んだ人間を恨んで下さい。」(いずれも原文まま)など過激な書き込みがあった。

 これらの書き込みには批判も相次ぎ、すでにアカウントを削除した発信者もいる。

普天間めぐる佐喜真氏の熱弁に官邸が激怒 沖縄県知事選の舞台裏

2018年10月4日

 「世界一危険と言われる飛行場をいつ返すんだ。日本政府が早く返してくれ」。8月24日、沖縄県那覇市内のホテルで開かれた佐喜真選対の事務所開きで、佐喜真淳氏は顔を紅潮させ、涙ながらに米軍普天間飛行場の早期返還を訴えた。会場からは割れんばかりの拍手が湧き起こった。しかし、翌日以降、佐喜真氏の普天間返還移設問題に対するトーンは抑え気味になり、終盤は「基地の整理縮小」という言葉に変わっていった。辺野古新基地反対を掲げている公明党への配慮もあったが、演説の内容を聞いた首相官邸が激怒し、基地問題を争点化しないよう強くくぎを刺した。

 知事選は、普天間飛行場の名護市辺野古移設問題の是非が最大の争点となったが、翁長県政の継承を掲げ、新基地阻止を公約に掲げた玉城陣営とは打って変わって、佐喜真陣営は2月の名護市長選と同様に「辺野古の『へ』の字も言わない」戦略を徹底した。

 毎週月曜に会議で顔を合わせた公明党やその支持母体である創価学会幹部からも普天間返還・移設問題に触れないよう指示が飛んだ。自民党にとって、選挙戦における「辺野古移設問題」は鬼門で、4年前の知事選や2016年の参院選での敗北がいまだに「トラウマとして残っている」(自民関係者)という。辺野古問題は最後まで佐喜真氏に重くのしかかり、逃れることはできなかった。

 8万票以上の大差が付いた今回の結果は、防衛省関係者にとっては予想外だった。防衛省は選挙期間中、翁長県政による埋め立て承認撤回への対抗措置を見合わせてきた。知事選への悪影響を懸念したことや、どの候補が当選するかで戦略が変わるからだ。

 防衛省の対応に県幹部の一人は「そうせざるを得なかったのだろう。強権的な対応は安倍政権にとって全国的に見てマイナスだ」と冷静に見る。

 2日、内閣改造で防衛相に就任した岩屋毅氏は、会見で辺野古移設計画について問われ「着実に進める」と答えた。会見は首相官邸と防衛省で2度開かれたが、岩屋氏は直接「辺野古」とは言わず言葉を濁した。政権が推した候補の大敗直後だっただけに、歯切れが悪い印象は否めなかった。

 玉城デニー氏当選の一報は米国内でも驚きをもって伝えられた。主要メディアは玉城氏の当選を大きく報じ、移設計画への影響を指摘した。ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「基地に反対すると公約した海兵隊員の息子が知事選で勝利」という見出しで「彼の勝利は両政府の計画に後退をもたらす」と分析した。米AP通信は「日本の新基地建設計画にさらなる疑問を投げ掛ける」と報じた。

 辺野古新基地建設に「ノー」を突き付けた今知事選の結果は、日米両政府共に無視できない波紋を広げている。

米、大差に「驚き」 県知事選 移設堅持も変化の兆し

2018年10月5日

玉城デニー氏の県知事戦勝利で、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は「解決済み」としていた米ワシントンにわずかな変化が見え始めている。米政府は辺野古移設堅持の姿勢を崩さないが、安倍政権が全面支援した佐喜真淳前宜野湾市長に8万票余の差を付けた玉城氏の大勝は、政府関係者も「驚き」と受け止める。在沖米軍基地の安定運用も踏まえ、識者らは「沖縄の選挙結果に敬意を示すべき」「安倍政権が辺野古移設の工事を強行すれば、県民の怒りは一層高まる」と、日米同盟への影響を危惧し、玉城新知事と日本政府との対話に注目している。

■「同情票」注視
 「佐喜真市長はどうか。菅義偉官房長官とも仲が良いと聞く」

 当初、12月に予定された県知事選について、米政府関係者は春ごろから翁長雄志知事の対抗馬に関心を寄せていた。「(埋め立て承認撤回など)翁長知事がどう動くかに、特別な関心はない。名護市長選や県内の首長選で連勝し、代替施設建設に反対しない候補者が知事選も勝つと日本政府は見込んでいる」と、日本政府の見方を支持した。

 自民党が推す候補者の勝利で、新基地建設への「抵抗」に終止符を打てると見込んでいた両政府だったが、翁長氏の急逝で状況は一変。佐喜真氏勝利への期待の一方、翁長氏への「同情票」がどう影響するかに神経をとがらせていた。

 ジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ教授は新基地建設の強行は県民の一層の怒りを招くと警鐘を鳴らし、「選挙結果が米政府に普天間代替施設の再考を促すなら、日米同盟をより安定した政治土台に置く好機となる」と説明。玉城氏訪米の際には、国務省、国防総省は建設的な対話に向けて歓迎すべきだと指摘した。

■「結果に敬意を」
 リチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョセフ・ナイ元国防次官補、戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン上級副所長―。3日にワシントンで開かれたシンポジウム。知日派で「ジャパンハンドラーズ」と称される面々がそろい、日米同盟強化に向けた政策提言報告書を発表した。

 自衛隊と米軍による「日米共同統合任務部隊」の創設や基地の共同運用拡大など、中国の台頭を踏まえ、アジアの安全保障に日本はより参画せよと迫る報告書の説明中、県知事選の話題が上った。

 シーラ・スミス外交問題評議会上級研究員は「沖縄は(新基地建設に反対する)継続を選んだ。日米同盟は県民感情の理解に注意を払い、焦点の問題について取り組み続けるべきだ」と説明。「玉城氏は辛勝ではなく、大勝した。私たちはその結果に敬意を示すべきだ」と述べた。

 アーミテージ氏は「新知事は東京(日本政府)と話したいとしている。米国は東京と沖縄のサンドイッチになりたくない」としながらも、報告書で提示した自衛隊と米軍による基地の共同運用や民間空港、港の使用を上げ、「人口密集地の負担を軽減しようとしている」と説明した。

 米側が「沖縄の政治の新しい顔」(スミス氏)に注目する中、玉城新知事に対して日本政府がどのように対応していくか。ボールは東京に投げられている。(座波幸代本紙ワシントン特派員)

 

ファクトの重み実感  知事選のツイート分析報道

2018年10月6日

9月30日の県知事選で、琉球新報は選挙取材班の「ファクトチェック」と同時に、SNS(会員制交流サイト)のツイッターに発信される内容を調べた。選挙の際にSNSで情報が大量に流れているのを漠然と感じていたが、今回の調査で、その投稿内容の傾向を知ることができた。

 

 若い世代の情報入手先は新聞やテレビ、ヤフーニュースなどの大手ポータルサイトでもなく、SNSになっている。自分と考えの近い人たちのつぶやき、共有したニュースから情報を得ている現状で、知事選を巡り、どのような情報が飛び交うか探りたかった。投稿を集める作業はネット上に書き込まれた事件や災害などの情報をリアルタイムで発信するスペクティ(東京、村上建治郎社長)に依頼した。

 一般ユーザーの投稿について、内容が肯定的か否定的か、正確に把握するには一件一件読んだ方が確実だと判断した。

 9月9日~同29日に発信された投稿のうち、リツイート(再投稿)分も含め約20万件以上に目を通した。初回の分析では夜通しで半日以上かかった。

 特定の候補者を批判、攻撃する内容が多いとは思っていたが、露骨な誹(ひ)謗(ぼう)中傷を含めた攻撃、批判の内容がほとんどだったため驚いた。約9割は玉城デニー氏に対する内容だった。政策や沖縄の課題を議論するやりとりや互いの支持候補を褒める内容は少なかった。

 人の悪口を大量に読むのは気が滅入ったし、単調で膨大な作業の途中、何度も眠気に襲われた。しかし過激な内容が目を覚まさせた。「玉城デニーは中国のスパイ」「裏に中国共産党がいる。沖縄が破壊される」などだ。

 候補者本人の投稿のリツイート(再投稿)数が多い人も分析した。佐喜真淳氏のリツイートが多い上位を見ると、プロフィル欄に「日の丸」をあしらい、普段から「ネトウヨ」とみられる内容の投稿をしている人が目立った。

 一般の投稿では新聞や雑誌、ネットメディアが特定の候補者に関する内容を掲載した際、リツイートを含め投稿数が飛躍的に伸びた。琉球新報が行ったファクトチェックの記事も拡散が見て取れた。どれだけフェイクニュースを打ち消すことができたのかは不明だが、一定の効果はあったのではないかと思う。

 情勢分析もしたかったが、玉城氏への攻撃、批判がほとんどを占めたツイッターでは難しかった。インフルエンサー(情報拡散力の強い人)の確認も試みたが、今回の分析では情報が整理できなかった。

 スマホがこれだけ普及し、誰もがSNSで気軽に発信でき、情報を得ることができる時代になった。SNSを意識して有権者が求める分かりやすい記事を書いていくことも、報道機関には必要だと実感した。(デジタル編集担当部長・宮城久緒)

 

「沖縄、終わった」 知事選結果に相次ぐ中傷 SNS投稿、拡散

2018年10月6日

9月30日投開票の県知事選で各報道機関が玉城デニー氏の当選を伝えるニュースを流した直後から、ツイッターなどSNS上で複数の人から「沖縄、終わった」などとする投稿があった。投稿者は知事選で玉城氏以外を支持していた人とみられる。

 作家の百田尚樹氏は9月30日、一部報道が玉城氏の当選確実を報じた直後に「沖縄、終わったかもしれん...」と発信した。1万2236件の「いいね」が付き、4534件がリツイート(再投稿)された。

 百田氏の投稿に対して「ほんとに沖縄が中国に侵略されることを証明してくれるのか」と疑問視するコメントに対し、百田氏は「されては困るんだよ!」と返した。 以降、一般からも「あー沖縄終わったね ついに中国領沖縄か」「沖縄のことが心から嫌いになりそう」「沖縄県民には良識がない」など、玉城氏や沖縄県民を誹謗(ひぼう)中傷する投稿が相次いだ。

 一方、百田氏や一般からの「沖縄、終わった」の投稿に対しては、「終わったのではなく、始まったばかり」「はなから沖縄は日本の植民地ぐらいにしか思っていない人たちの投稿だ」「負け惜しみだ」など反論する内容も多く投稿された。

<社説>あす翁長氏県民葬 沖縄のこころ継承したい 2018年10月8日

在任中の8月8日に死去した第7代沖縄県知事の翁長雄志氏の県民葬が9日、那覇市の県立武道館で営まれる。多くの県民に惜しまれながら、この世を去った。あらためて哀悼の意を表したい。 翁長氏は知事就任からこの世を去るまでの3年8カ月を、ウチナーンチュの誇りと尊厳を取り戻す闘いにささげた。それは米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の阻止を掲げ、その信念を貫き通したことに表れている。
 2014年9月の知事選出馬会見で、翁長氏はこう述べた。
 「豊かな自然環境は今を生きる私たちだけのものではない。これから生まれてくるウチナーンチュの宝物でもある。イデオロギー(思想)よりもアイデンティティー(自己同一性)に基づくオール沖縄として、子や孫に禍根を残すことのない責任ある行動が今、強く求められている」
 沖縄が一つになる必要性を沖縄の政治家の誰よりも痛感していた。それは出馬表明5カ月前の討論会で「沖縄県民は自分で持ってきたわけではない基地を挟んで、基地だ、経済だと大げんかをしてきた。上から目線で本土の人が見ているような気がして、とても許せない。やはり県民はまとまって取り組まないといけない」と述べていたことからも分かる。
 だからこそ互いの立場を超えた「腹八分、腹六分で目標を設定し、県民が一つとなった運動」を呼び掛けた。それこそが「イデオロギーよりアイデンティティー」による結束の根底にある。
 知事選は現職に10万票という大差をつけて圧勝した。翁長氏の訴えが多くの県民の心に響いたからだ。翁長氏はその期待を背に、辺野古新基地建設で強硬姿勢を崩さない政府に、敢然と向き合った。
 知事就任から4カ月後の15年4月、菅義偉官房長官との初会談の場で、辺野古移設を進める政府の姿勢を「日本の政治の堕落だ」と批判し、建設阻止のため一歩も引かない覚悟を示した。そこには県民の思いを成し遂げるため、何も恐れない強固な信念を持つ政治家の姿があった。
 そして同年5月の新基地阻止の県民大会で、翁長氏は壇上から県民の気持ちを代弁する言霊を発した。
 「うちなーんちゅ うしぇーてーないびらんどー(沖縄人をないがしろにしてはいけませんよ)」
 会場から割れんばかりの拍手が湧き起こった。県民がどれほど勇気づけられたか。
 今年の慰霊の日、沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で翁長氏は「戦争の愚かさ、命の尊さという教訓を学び、平和を希求する『沖縄のこころ』」を世界に伝える決意を示した。
 県民葬では多くの参列者と共に、翁長氏の遺志を受け止め「沖縄のこころ」を継承する契機としたい。

オール沖縄 県内主要選に弾み 豊見城市長に山川氏

2018年10月15日

玉城デニー氏が9月30日の知事選で当選して最初の県内選挙となった豊見城市長選は、玉城知事が支援する山川仁氏が、現職と自民党が推した新人の計2人を下し、勝利した。県政与党にとって知事選に続く勝利で、21日投開票の那覇市長選に弾みをつけた格好だ。

 山川陣営は玉城知事とのセット戦術を展開することで知名度不足を克服した。翁長雄志前知事が構築した「オール沖縄」勢は、全県選挙では強みを発揮してきたが、今年2月の名護市長選や3月の石垣市長選、4月の沖縄市長選と3連敗を喫するなど、基地問題以外に身近な争点の多い地域選挙では苦境に立たされていた。

 市長選での勝利は1月の南城市長選以来で、県内11市のうち、玉城氏を支える市長は那覇と南城と合わせて3人となった。今回の勝利は、保守分裂が有利に働いた面もあるが、玉城知事にとって初戦を勝利で飾ったことで、求心力を強めるとともに、安定した県政運営に向け追い風となったといえる。玉城知事を支える県政与党にとっても来年4月に実施される見通しの衆院沖縄3区の補欠選挙や夏の参院選に向けた与党共闘にも弾みをつけた。

 一方、2連敗を喫した自民党県連は態勢の立て直しが急務だ。知事選で示された辺野古新基地建設反対の民意に今後どう向き合っていくかも問われそうだ。 

ヘリパッド撤去「公約に」 渡具知名護市長、議会で明言

2018年10月16日

名護市の渡具知武豊市長は15日、米軍キャンプ・シュワブ内にあるヘリパッド全7カ所の撤去の実現を求めていく考えを明らかにした。市議会本会議で「強く訴えていく」「(撤去を)公約と捉えて結構だ」と明言した。渡具知市長は2月の市長選ではシュワブのヘリパッド撤去を公約に掲げていなかった。市議会3月定例会では国立高専近くのヘリパッド撤去を求める考えを示していたが、シュワブ内全7カ所の撤去を「公約」と明言したのは初めて。 後略

山城議長「抗議は正当」 控訴審初公判 憲法学者の証人採用

2018年10月17日

名護市辺野古の新基地建設や東村高江の米軍北部訓練場ヘリコプター発着場建設に対する抗議活動を巡り威力業務妨害や公務執行妨害・傷害などの罪に問われ、一審で有罪とされた沖縄平和運動センターの山城博治議長(66)ら2人の控訴審初公判が16日、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)で開かれた。山城議長側は表現活動として一連の行為の正当性を訴え、器物損壊以外は無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めた。判決は12月13日を予定している。

 一審判決は名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前でのブロック積み上げ行為について「表現の自由の範囲を逸脱している」などと判示し、山城議長に懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡した。

 控訴審で弁護側は「国が民意に反して新基地建設を強要する過程に生じた事件。民意を表現した山城さんらの行為に威力業務妨害罪を適用するのは違憲だ」と改めて主張した。大久保裁判長は一審が認めなかった憲法学者の高作正博関西大学教授の証人尋問を採用した。高作教授は威力業務妨害罪適用の違憲性などについて証言する。次回11月13日の第2回公判で証人調べをし、結審する。金高望弁護士は「証人採用は一歩前進。表現の自由の価値に踏み込んで判断することを期待したい」と話した。

渦巻く政府不信 区民投票求める動きも 辺野古区の個別補償拒否

2018年10月17日

 米軍普天間飛行場の移設問題を巡り、防衛省から個別補償を拒まれた名護市辺野古区では、上京して直談判する動きや、移設の是非を問う区民投票を求める案も浮上している。移設受け入れ条件の大きな柱が崩れることへの衝撃は大きく、区民からは「思わせぶりな態度で期待させてきたのか」と政府不信が渦巻く。「地元の地元」が掲げてきた「条件付き容認」の土台は、大きく揺らいでいる。

 防衛省の方針を伝えられてから約1週間後の8月9日。辺野古区の役員らは市役所を訪ね、渡具知武豊市長に要請書を手渡した。 後略

那覇市長選 城間幹子氏が再選 4年間の市政運営に評価

2018年10月21日

任期満了に伴う那覇市長選は21日投開票され、無所属現職の城間幹子氏(67)が7万9677票を獲得し、4万2446票を得た無所属現職で前県議の翁長政俊氏(69)=自民、公明、維新、希望推薦=を3万7231票差で破り、再選を果たした。

 城間氏は9月30日の知事選で勝利した玉城デニー知事と同じ「オール沖縄」の組織体制を維持して盤石の選挙運動を展開し、無党派そうに支持を広げ、企業も一部取り込んだ。

 「オール沖縄」勢は、宜野湾市長選は落としたが、知事選、豊見城市長選に続く勝利となった。選挙結果は玉城デニー知事の県政運営に追い風となりそうだ。一方、投票率は49・19%で戦後行われた22回の市長選で4番目に低い結果になった。

 那覇市長選は、子育て施策や街づくりなどを争点に論戦が繰り広げられたほか、1期4年の城間市政への評価も問われた。城間氏の当選は、市民が市政運営を信任した結果だ。認可保育園の増設による待機児童数の減少などが評価された。

 選挙戦で城間氏は、4年前に市政を託された翁長雄志前知事の後継であることや、玉城県政との連携を前面に打ち出した。オール沖縄の支援体制で選挙運動を展開し、知事選勝利の勢いに乗って支持を広げた。現職としての知名度を生かした。

 一方、翁長政俊氏は現市政の課題や問題点を指摘し、市政刷新を訴えた。ただ、支援組織が知事選にも取り組んだ関係で、実質的な動き出しは知事選の後となり、政策や訴えが十分に浸透しなかった。自民党県連は知事選と同様に「自公維」の枠組みで選挙戦に臨んだが、支持を広げられなかった。組織体制の立て直しが急務となっている。

 当日の有権者数は25万5487人。投票率は14年の前回選挙に比べて17・06ポイント低かった。【琉球新報電子版】

県きょう意見書送付 辺野古承認撤回執行停止 「国に正当性なし」

2018年10月24

 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設を巡り、県の埋め立て承認撤回に政府が対抗措置を講じた件で、県は撤回の効力を止める執行停止は認められないとする意見書を24日、国交相へ送付する。沖縄防衛局は国土交通相に対し行政不服審査法に基づき撤回の審査と効力停止を求めている。これに対し県は国民の権利救済が同法の目的で国が利用できないことや撤回の正当性、執行停止を認める緊急性がないことなどを訴える。

 県幹部は「まずは執行停止を認めさせないことが重要」と強調する。一方で国交相が執行停止を認めた場合は、国と地方公共団体の争いを扱う国地方係争処理委員会に不服を申し立てることを軸に対抗策を検討している。防衛局が求めた撤回取り消しに対する弁明書は県が11月20日までに国交相に提出する。

 防衛局は工事が止まっている間も1日当たり約2千万円支出していることや、普天間飛行場の危険性除去が遅れることなどを主張し、効力を止める緊急の必要性があると国交相に申し立てている。県は撤回から1カ月半以上たっていることなどを挙げて反論するとみられる。行政不服審査法に基づく審査請求は2015年に県が埋め立て承認を取り消した際にも政府が取った対抗策で、国が「私人」と同様の立場を主張したことに対し、行政法学者や裁判所から批判を浴びた。

国の対抗措置「違法」 「辺野古」撤回執行停止申し立て 行政法研究者110人声明

2018年10月27日

【東京】全国の行政法研究者有志110人は26日、連名で沖縄防衛局が国土交通相に対し行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止を申し立てたことについて「国民のための権利救済制度を乱用し、法治国家にもとる」と批判し、国交相に却下を求める声明を発表した。声明は行政不服審査法が「固有の資格」の立場にある行政機関への処分に対して明示的に適用を除外しているとし、防衛局の審査請求や執行停止の申し立ては「違法行為に他ならない」と批判した。防衛局が同じく国の行政機関である国交相に申し立てたことに「審査庁に特に期待される第三者性、中立性、公平性を損なわせる」と疑問視した。

 2015年に県が埋め立て承認を取り消して防衛局が今回同様の対抗措置を取った際、国交相は執行停止を迅速に決めて工事を再開させた一方、審査請求は16年の和解で取り下げられ、長期間違法性を判断しなかったことも国交相に中立性が見込めない根拠とした。

 声明の呼び掛け人10人のうち紙野健二名古屋大名誉教授、亘理格中央大教授、岡田正則早稲田大教授、白藤博行専修大教授の4氏が26日、国会内で会見した。

 紙野氏は23日に文案をまとめてから短期間で多くの賛同者が集まり「いくらなんでもひどいと感じた行政法学者が多かった。この反応は重大だ」と語った。

 15年に翁長雄志前知事が埋め立て承認を取り消し、防衛局が行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止を国交相に申し立てた時も同様の声明が発表された。