琉球新報1月、2019

2019年04月14日 18:10
健闘 互いに誓う ハワイで請願活動 梶原さんとテレビ電話2019年1月6日 
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設に抗議する集会が5日、米軍キャンプ・シュワブゲート前であった。年明け初の毎月第1土曜日恒例の県民大行動に約千人が参加し、新基地建設を止める決意を新たにした。参加者はトランプ米大統領に2月の県民投票まで埋め立て作業の一時停止を求める請願活動を始めた県系4世でハワイ在住のアーティスト・ロバート梶原さん(32)とテレビ電話を通して、互いの運動への健闘を誓い合った。
 「ハイサイ」とウチナーグチであいさつした梶原さんは、座り込む市民を見て涙ぐんだ。テレビ電話は、梶原さんやハワイで沖縄の文化継承に取り組む県系4世・エリック和田さん(53)らが、沖縄の海や人権を守る市民に感謝したいとの思いから実現した。
 梶原さんが「一人一人が私にとってヒーローで、私を奮い立たせ、署名運動をさせた。大統領から確かに返事は来る」と語り、会場から拍手が湧き起こった。
 沖縄平和運動センターの山城博治議長(66)は「世界に広がるウチナーンチュの団結を見せつけよう。県民は負けない」と語気を強めた。署名を呼び掛けるチラシを作成した県立芸大大学院1年の西永怜央菜さん(23)は「ゲート前に行かなくてもネットなどでできることはある。20万人分は集めたい」と署名を呼び掛けた。署名は7日締め切りで、5日午後4時半現在、17万7291筆集まっている。
 梶原さんが7日にホワイトハウス前で直訴集会を開くのに合わせ、県内でも8日午後4時から米軍キャンプ瑞慶覧石平ゲート前で連帯の行動がある。海上では埋め立て作業が続けられた一方、ゲート前から工事車両による搬入はなかった。
市民ら一斉行動 県民投票実施要求
2019年1月8日
市長や市議会の判断で投票権が行使できなくなる状況に、市民から怒りの声が上がった。名護市辺野古への新基地建設の賛否を問う県民投票の事務を実施しないことを表明した宮古島市、宜野湾市、沖縄市や態度を保留しているうるま市や糸満市、石垣市の役所前で7日、県民投票の実施を求めた一斉のスタンディング抗議行動には計約290人が参加した。市民らは「市民の口をふさぐ行為だ」などと批判し、投票権確保を訴えた。

 街頭 参加訴える 宜野湾 「悪い前例つくるな」
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国道を通る車に県民投票の実施をアピールする市民ら =7日、宜野湾市役所前
 【宜野湾】米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市では、市民ら約30人が市役所前に集い、松川正則市長に対し県民投票の事務実施を求めた。市民らはリレートークで県民投票に対する思いを表明。「県民投票の実施をお願いします!」などと書いた看板を手に市役所前の国道330号を通る車に手を振り、県民投票の実施を強くアピールした。
 リレートークでマイクを握った国吉真栄さん(55)=市大謝名=は「辺野古移設に賛成してる人も反対してる人もいる。(県民投票不参加は)その人たちを羽交い締めにして、口をふさぐ行為だ。投票の権利を奪わないでほしい」と訴えた。
 県民投票の実施を求める請求代表者の屋良朝敬さん(69)=市大山=は「県民投票を放棄するとは情けない。なぜ堂々と実施しないのか。県民投票を実現し、県民の声を民意として埋め立て反対を要求したい」と主張した。
 市民からは「反対する理由が普天間の固定化なら、固定化に関する住民投票もやろう」「投票事務を拒否すれば、今後国内で住民投票があった場合の悪い事例をつくってしまう」などの声が上がった。リレートーク後、市民らは通行車に手を振り「県民投票を実施しましょう」などと訴えた。

 「民主主義揺るがす」 宮古島 訴訟も視野に活動
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県民投票の実現を求めて声を上げる市民ら =7日、宮古島市役所平良庁舎前
 【宮古島】宮古島市では、下地敏彦市長が県民投票を実施しない意向を示していることを受け、市役所平良庁舎前で7日、有志でつくる「県民投票実現!みゃーくの会」(奥平一夫、亀濱玲子共同代表)のメンバーを中心にしたスタンディング抗議行動が行われた。
 市内各地から市民ら90人が集まり「投票権を奪うな」「県民投票を実現せよ」などと書かれたプラカードを掲げ、投票実現に向けて声を上げた。
 奥平代表は「このまま実施されなければ、民主主義の根幹を揺るがす事態だ。訴訟やリコールも含めた動きをこれから展開していく」と述べ、原告団への加入を市民に呼び掛けた。
 市長の対応に疑問を持ち参加した50代女性=市平良=は「宮古島市民も沖縄県民。ちゃんと県民として投票をしたい」と話した。

 市民ら実現向け要請 沖縄市 市長リコールも検討
 【沖縄】沖縄市役所前には市民有志約60人(主催者発表)が集まり、市役所を訪れた人に「県民投票を一緒に成功させよう」「市民の権利を奪わないよう、理解をお願いします」と呼び掛け、チラシを配布した。集会後には、桑江朝千夫市長の県民投票に関する会見があった。会見内容をいち早く知ろうと、市民らは会場の外で待機。スタンディング抗議行動に参加した。
 「辺野古埋め立て・新基地建設反対の民意を示す県民投票連絡会沖縄市支部」メンバーらは、不参加の一報を受け住民訴訟や市長のリコールも含め、今後の対応を検討していくことを明らかにした。
 桑江市長の会見を前に集まった市民は、仲本兼章総務部長を訪ね、要請文を手交した。普久原佳子さん(71)=市嘉間良=は「辺野古の埋め立てを問う県民投票は、沖縄の命運を懸ける大事な問題だ。みんなで沖縄の問題について考える機会を与えてほしい」と訴えた。仲本部長は「市長には、私の方から皆さんの意見、文書を伝える」と文書を受け取った。
 「投票権を奪わないで」と書かれたプラカードを持ち、役所前に立った比嘉ヨシさん(75)=市南桃原=は「投票権は市民の当然の権利で、それが行使できないことはありえない。市長は市民の声に耳を傾けてほしい」と投票の実施を切望した。
 県民投票連絡会の市支部は、県民投票不参加を受け8日午後6時半から中頭教育会館で「市民みんなで話し合う会」を予定しており、今後の対応について市民と協議する方針だ。

 石垣・うるま・糸満 市民ら呼び掛け 「声上げるのが大事」

 
車道に手を振って県民投票実施に向けて協力を呼び掛ける参加者ら=7日、石垣市役所前
 【石垣・うるま・糸満】「市民の自己決定権を奪うな!」―。市議会が予算案を2度否決した石垣市と、市議会での予算案の再議を8日に控えたうるま市と糸満市でも市役所前に市民らが集まり、道行く人に県民投票実施に向けて協力を呼び掛けた。各市長に県民投票の実施と、事務処理を拒否する際には住民説明会の開催を求める要請書もそれぞれ市に提出した。
 石垣市役所前には40人余りの市民が集まった。観光業に従事する50代女性は「声を上げないと『イエス』になり、上に勝手に決められてしまうので参加した。県民投票は市民の権利。一市長、一議会で決めないでほしい」と話した。
 うるま市では市民ら約20人が市役所前に立った。久高政治さん(70)は「辺野古基地建設に賛成、反対いずれの意見でも表現することが大事だ。その権利をうるま市民から奪わないでほしい」と語った。
 糸満市役所前の潮崎交差点には市民ら50人余りが集まった。井出佳代子さん(58)は「若者たちが自分たちの未来を考えたいという思いを、大人は受け止める責任がある。市議会で予算案が可決されることを心から願う」と強調した。
米首都で集会 工事停止訴え 請願署名20万超に
2019年1月9日
米首都ワシントンのホワイトハウス前で7日、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立ての賛否を問う県民投票まで工事を停止するようトランプ米大統領に求める集会が開かれた。県民投票まで工事停止を求めるホワイトハウスへの請願活動を始めた県系4世のアーティスト、ロバート梶原さん(32)=ハワイ在=をはじめ米在住の日本人や米国人ら約40人が参加し、「沖縄に米軍基地はいらない」などと書いたプラカードや横断幕を持って、工事停止を訴えた。請願署名は開始から30日を過ぎた8日午前9時(日本時間同日午後11時)時点で約20万2258筆が集まった。
 集会を主催した梶原さんは「少なくとも沖縄の人々が2月24日の県民投票で民主的な権利を表明できるまで工事を停止すべきだ」と訴えた。
 梶原さんは昨年12月8日、ホワイトハウスの請願サイト「We the People」で、トランプ大統領宛てに埋め立て工事の中止を求める請願を始めた。
 インターネット署名が呼び掛け開始から30日以内に10万筆が集まれば、ホワイトハウスから何らかの返答が60日以内に届く仕組みになっている。
 英ロックバンド「クイーン」のギタリストで天文学者のブライアン・メイさんら国内外の著名人らも署名をするなど、賛同の輪が広がっている。同サイトで確認できる請願で5番目に多い筆数となっている。署名は同サイトで引き続きできる。

自民国会議員、県民投票反対を「指南」 市町村議に資料「予算否決に全力を」
2019年1月14日
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、弁護士資格を持つ宮崎政久衆院議員(自民)が先月、市町村議会で投票事務予算を採決する前に、市町村議員を対象にした勉強会を開き「議員が損害賠償などの法的な責任を負うことはない」などと記した資料を配布して予算案の否決を呼び掛けていたことが分かった。宮崎氏の主張が市町村議会での否決に影響を与えた可能性がある。本紙が入手した資料には「県民投票の不適切さを訴えて、予算案を否決することに全力を尽くすべきである」と明記されている。
 予算案が否決された場合の対応についても「議会で否決された事実を前に、これに反して市町村長が予算案を執行することは議会軽視であり、不適切である」などと断定している。

 宮崎氏は本紙の取材に対し「議員が時々の政治課題について勉強会などを通じて意見交換し、互いに知見を持つことは大切だ」とコメントし、党本部の指示はないとした。

 本紙が入手したのは、宮崎氏の名前が入った先月5日付の「県民投票条例への対応について」と題した資料など2点。条例の対応についてでは、1枚目には県民投票の問題点として「普天間飛行場の危険性除去について何ら配慮、検討がされてない」「固定化リスクが高まるばかり」「県民の意思は賛否二択に集約できない」「客観的かつ中立的な情報提供が実現できない」など6点を挙げている。

 2枚目では「市町村議会において問題提起を行うタイミング」として「1 県民投票に反対する意見書の採択」「2 投票事務に必要な予算案を否決する」ことを提案している。実際に市町村議員が議会での予算案を巡る反対討論や反対の意見書で指摘した内容は、宮崎氏の主張と一致している。現在、投票事務を拒否している市長らの見解とも重なっている。

 別の資料は「県民投票条例への対応に関する地方自治法の解釈」と題する。その中では「議会運営の方法論としては、採決するまでに議論が熟さず、当該予算を審議未了で継続もしくは廃案にするということも考えられないか」などと提起している。

琉球新報知事選ファクトチェックに新聞労連ジャーナリズム大賞 2019年1月16日 15
日本新聞労働組合連合(南彰委員長)は16日、第23回新聞労連ジャーナリズム大賞に、琉球新報沖縄県知事選取材班の「沖縄県知事選に関する情報のファクトチェック報道」を選んだと発表した。

 琉球新報の大賞受賞は、2015年の「普天間・辺野古問題」キャンペーン報道での受賞以来、6回目。
 選考評は「有権者の判断がゆがめられないような環境をつくるための紙面を展開した」と指摘した。その上で「選挙戦の後も、根拠なき情報がSNS(会員制交流サイト)などを通じて瞬時に広がる現代社会の実態を明るみに出す企画を続けており、新聞ジャーナリズムに期待される新たな役割を先駆けた功績は大きい」と評価した。

 優秀賞は、長崎新聞取材チームの「カネミ油症50年」と、宮崎日日新聞編集局取材班の「自分らしく、生きる 宮崎から考えるLGBT」の2件が選ばれた。特別賞は該当がなかった。第13回疋田桂一郎賞には、毎日新聞新潟支局の「『過労に倒れた難病の妹』を始めとする新潟県庁での過労死を巡る一連の報道」が選ばれた。

辺野古、設計変更へ 政府、軟弱地盤認める 改良申請、県は不承認へ 3月25日、新工区に土砂
2019年1月22日
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が埋め立て予定海域で確認された軟弱地盤の改良工事に向け、今春にも設計変更に着手する方針であることが21日までに分かった。3月までにボーリング地質調査の結果をまとめ、年内に設計変更を県に申請する。県はこれまで軟弱地盤の存在による工事長期化などを指摘し、玉城デニー知事は計画変更を承認しない構えを見せている。新たな対立点として表面化し、県と政府の攻防が激しくなりそうだ。一方、沖縄防衛局は21日、県に対し現在の土砂投入区域に隣接する「埋め立て区域2」の土砂投入を3月25日から始めると通知した。 
 改良工事に向けた設計変更について政府関係者が明らかにした。軟弱地盤が存在するとの指摘に対し、防衛省は調査中として、これまで言及を避けてきたが、これを認めた上で地盤改良が必要と判断した。

 設計変更が必要になるのは大浦湾側の水深のある海域で、これまで防衛省が実施したボーリング地質調査で地盤強度を示す「N値」がゼロを示す地点が複数見つかった。
 防衛省は実施中の追加調査を踏まえ、地盤の強度を「総合的に判断する」と説明してきた。
 地質調査は本年度内に結果がまとまる予定だ。政府は調査結果を受けて改良工事に向けた設計変更の手続きに入り、準備が整い次第、県に申請する。
 軟弱地盤の存在は、県が昨年8月に埋め立て承認を撤回した際に挙げた根拠の柱の一つとなった。玉城知事は地盤改良により当初計画より工期が長引いたり工費が膨らんだりすることなどから、政府が進める辺野古移設こそが普天間飛行場の固定化につながると訴えている。
県民投票 沖縄弁護士会アンケート 投票事務拒否「違法」9割
2019年1月23日
名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を5市長が拒否している問題で、琉球新報は22日までに、沖縄弁護士会所属の弁護士(正会員267人)に投票事務の執行責務に関するアンケートを実施した。市町村の首長が投票事務を拒否することについて、回答した52人のうち約9割の48人が地方自治法や憲法上、違法と指摘した。適法と答えたのは1人だった。3人は判断を避けたが、2人が憲法上の問題が生じるなどとし、1人は「判断できる立場にない」と理由を述べた。
 投票事務の法的義務の有無については50人が「ある」と回答。地方自治法の条文では、議会に事務予算が否決されても首長は原案を執行「できる」と明記していることから、約9割の弁護士が義務を履行しないことへの違法性を指摘しており、執行を拒む問題の大きさが浮き彫りになった。

 地方自治法は、地域の住民自身が有権者の50分の1以上の署名を集めれば自治体の条例で実施ができる県民投票制度を定めている。今回の新基地建設の賛否を問う県民投票は、署名数が同法上必要な約2万4千筆を大きく超えて41市町村で10万950筆(最終確定9万2848筆)が集まり、関連条例の制定が実現した。

 ただ投開票事務は各市町村に移譲する。そのため各市町村で事務予算を組み込む必要がある。必要な予算は県が全額補塡(ほてん)し「義務的経費」として計上することになっていたが、宜野湾市、宮古島市、沖縄市、石垣市、うるま市の5市議会は予算を2度にわたって否決した。これを受け、5市長は県民投票への不参加を表明した。地方自治法上の法的責任については首長に予算執行の裁量があるとして問題はないとの認識を示している。

 アンケートは15日、日弁連ホームページの弁護士検索から沖縄弁護士会所属でファクスが届く弁護士に配布し21日までに回収した。

県民投票全県実施へ 与野党、3択合意 5市長参加の意向 29日に条例改正
2019年1月25日
辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票の実施を5市長が拒否している問題を巡り、県議会は24日、全会派による「各派代表者会」を開き、現行の賛成、反対の二者択一に「どちらでもない」を加えた3択に条例改正することで合意した。29日に臨時議会が開かれ、全会一致で3択への条例改正案を可決する。県議会の全会一致を受けた5市長の対応について、自民党県連の照屋守之会長は「私どもが決断すれば彼らも県民投票に応じると確約がとれた」と実施に転じることを説明。条例改正を受け全市町村での県民投票実施が確実となった。
 午前10時に始まった県議会各派代表者会で、新里米吉県議会議長が「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択への条例修正を与野党に提案し、5市が事務実施を受け入れるよう全会一致で可決する対応を求めた。

 議長提案に県政与党3会派と中立の2会派、無所属議員は賛同したが、野党の自民会派は難色を示した。議長提案に対して、自民が「普天間飛行場移設のための辺野古埋め立ては、やむを得ない」などを選択肢とする独自の3択案を主張。与野党協議は紛糾し、調整は夜間に及んだ。

 結局、午後9時45分に再開したこの日3回目の各派代表者会で、自民の照屋会長が「私どもの提案を取り下げ、議長提案を認めたい」と述べ、全会一致の運びとなった。照屋会長は記者団に「会派内には異論はあるが、私の強い思いで政治状況を鑑みて決断した」と説明した。

 県議会で全会一致の方向となったことを受け、桑江朝千夫沖縄市長は24日夜、本紙の取材に「選管に(投票事務)の準備を指示する」と明言した。また、松川正則宜野湾市長も記者団に「これでノーと言えば仁義に反する」と実施の意向を示した。

 県民投票の実施を求める署名を集め、条例制定を請求した「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表は「私たちの思いを酌んでくれる政治家がいてくれた」と述べ、県議会の全会一致により全市町村で実施されることを歓迎した。

 県は36市町村については1カ月後に迫った2月24日の投票日は変更せず、事務準備が遅れている沖縄、宜野湾、うるま、宮古島、石垣の5市については、投票日を1~2週間延期することも検討する。
辺野古の新護岸着工 大浦湾側 国、県民投票前に強行
2019年1月29日 
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で沖縄防衛局は28日、大浦湾側の護岸「N4」(全長135メートル)の建設に着手した。辺野古移設の賛否を問う2月24日の県民投票まで1カ月を切る中で、政府が工事を加速させた格好。N4の完成後は、沖合に向かって伸びる護岸「K8」の建設にも着手する。K8の建設場所の海底にはサンゴが確認されているが、防衛局は移植せずに護岸の一部の工事を進めることが可能との認識を示している。完成後は両護岸を桟橋として資材の陸揚げに活用し、埋め立てを加速させる狙いがある。新たな護岸工事への着手は、県が埋め立て承認を撤回した昨年8月以降初めて。
 着工したN4護岸は辺野古崎の先の部分から東向けに伸びる。全体の護岸では8カ所目の着工となる。28日午前11時すぎには、運搬車で運んだ砕石を砂浜に敷き、ショベルカーで固める作業が確認された。市民らは大浦湾海上や米軍キャンプ・シュワブゲート前などで抗議行動を展開し「違法工事をやめろ」「埋め立てをやめろ」などと声を上げた。
 K8護岸の海底にあるサンゴを巡っては、県は埋め立て承認を撤回していることを理由にサンゴの移植許可を出していない。しかし防衛局が22日に開いた環境監視等委員会は「サンゴを移植せずに護岸建設を進めることができる」と確認した。防衛局は全長約515メートルのうち、サンゴまで約50メートルの距離にまで迫る250メートル分はサンゴに影響を与えずに工事が可能との認識を示している。
 一方、その後の工事ではサンゴを移植する必要があるほか、K8護岸の延長線上に現在政府が改良工事を予定している軟弱地盤が存在する海域があるため、工事の見通しは立っていない。
 28日は埋め立て区域への土砂投入作業や工事関係車両による米軍キャンプ・シュワブ内への資材搬入、名護市安和の琉球セメント桟橋での運搬船への土砂の積み込みも確認された。

新区域土砂投入へ加速 国、停滞印象の払拭狙いも

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で沖縄防衛局が新たに護岸「N4」に着工したのは、3月25日にも新たな区域へ土砂を投入する計画と連動している。陸揚げ場所を増やすことで、政府は工事を加速させることができる。軟弱地盤があるために着工できていない大浦湾側で新たな護岸に着工することにより、大浦湾側の行き詰まった印象を打ち消す意図も透ける。

 防衛局は現在、土砂を投入している埋め立て区域に加え、隣接する広範な区域でも土砂の投入を始める方針だ。
 しかし辺野古新基地建設に関して海上からの資材陸揚げに使っているのは大浦湾の最も北側にあるK9護岸のみで、土砂の供給は限定的だ。作業効率を上げるため、28日に着手したN4護岸とその後に続くK8護岸の一部を早期に建設し、陸揚げ場所として使う算段とみられる。
 N4の建設が予定される大浦湾側では軟弱地盤に対応するため地盤改良工事が必要となる見通しだ。県は完成に13年以上かかり、費用も2兆5500億円に膨らむと独自の試算を示し、新基地建設のハードルの高さを指摘する。政府は軟弱地盤が存在する一帯の護岸の造成費用について2019年度予算への計上を見送っている。
 2月24日に県民投票が全県で実施される公算が大きくなる中、政府としては工事を前進させることで停滞の印象を払拭(ふっしょく)し、県民の諦めを誘う狙いもあるとみられる。
 県は今後、防衛局に対し工事中止を求める行政指導をする方針だ。防衛局はこれまで県の指導に従わず工事を続けてきた。県民投票を前に県の指導に耳を傾けない政府の姿勢が前面に出れば、県民の反発を招き、諦めを誘う狙いと逆効果となる可能性もある。 (明真南斗)

防衛局を行政指導へ 県方針 副知事が政府批判

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める沖縄防衛局が新たな護岸建設に着手したことを受け、県は28日、防衛局に工事中止を求めて改めて行政指導をする方針を固めた。
 県幹部は週内にも指導文書を発出したい考えを示した。
 謝花喜一郎副知事は同日、記者団の取材に「埋め立て承認を撤回し、何も解決していない中で着工するのはおかしい。我々は納得していない」と批判した。また「本来なら護岸を造成するにはサンゴの移植も必要だ。ただ県としては承認を撤回しているので、移植許可を認めていない」と説明した。
軟弱地盤に杭6万本  辺野古新基地 政府、改良工事で検討
2019年2月1日 
米軍普天間飛行場の移設先となる沖縄県名護市辺野古の埋め立て予定海域に軟弱地盤が存在する問題で、政府が大浦湾の海域約57ヘクタールの地盤改良のため、砂の杭約6万本を水深70メートルまで打ち込む工事を検討していることが31日、分かった。沖縄防衛局は昨年末まで、使用する砂杭は護岸部で2万本、埋め立て部で2万本の計4万本という想定を国土交通省や県に示していたが、追加で実施したボーリング調査結果を加味したところ、さらなる強化が必要になると判断し、今年に入ってから使用量の想定を計6万本まで増やしていた。 
 こうした工法による軟弱地盤の改良工事を実施するため、安倍晋三首相は31日の衆院本会議の代表質問で、政府として計画変更の承認を県に申請することに初めて言及した。

 これに対し玉城デニー知事は「まさにわれわれが撤回の事由に挙げていた軟弱地盤の存在を、国が認めた。政府は即刻工事を中止して県と協議するべきだ」と工事中止を訴え、変更承認に応じない見通しとなっている。

 国が検討する改良工事は、防衛局の委託業者が作成した報告書で、大浦湾の軟弱地盤に対応可能な工法として記載されている。

 約6万本の内訳は、強く締め固めた砂杭を地盤に打ち込んで密度を高める「サンドコンパクションパイル」と呼ばれる工法を使う護岸・岸壁部で、約4万本を使用する。砂杭を打ち込んで地盤の水分を抜く「サンドドレーン」と呼ばれる工法を使う埋め立て部で、約2万本を使用する。

 改良面積は護岸部分などが約17ヘクタール、埋め立て部が約40ヘクタール。いずれも水深70メートルまで改良することを想定している。

 昨年12月時点では使用する砂杭を約4万本と想定していたことについて、政府関係者は「本格的検討はこれからなので実際何本になるかは不透明だ。工期や費用について指摘されている中、(本数は)少なくしたい」と語った。

 安倍首相は30日に、大浦湾側に軟弱地盤が存在し、地盤改良の必要があることを政府として初めて明言した。この時は変更申請については触れなかったが、31日の本会議で「地盤改良工事の追加に伴い、沖縄県に対して変更承認申請を行う必要があるため、まずは沖縄防衛局で必要な検討を行っていく」と説明した。共産党の志位和夫委員長に対する答弁。